弘前大(青森県弘前市)は、ゼミの女子学生にセクハラ行為などをしたとして、50代の男性准教授を停職6カ月の懲戒処分にした。処分は6月1日付。ホテルの同室宿泊を強制されるなど、3人の女子学生から申し立てがあった。
大学によると、この准教授は2014年3月、ゼミの女子学生と2人でアジア地域を調査した際、宗教施設やホテルの同じ部屋で13泊した。大学には「施設に宿泊部屋は1つだけだった。ホテルは同室の方が安く、安全と考えた」と説明しているという。
一方、女子学生は「嫌だったが、先生が不機嫌になると思った」と話しているという。わいせつなどの行為については申し立てがなかった。准教授は、ほかのゼミ生にも同室を申し出て、断られるなどしていた。
わいせつな行為はなく、准教授が主張するような理由で同室しただけだったとしても、セクハラになりうるのだろうか。飯田昭弁護士に聞いた。
●「性的な行為の有無は認定を左右しない」
セクハラ行為は、性的な性質の言動が対象になりますが、ここに言う「言動」は、性的行動に限らず、言葉や視線、酒席に強く誘うなど、かなり広い意味です。
また、大学におけるセクハラは、「アカハラ」あるいは「キャンハラ(キャンパス・ハラスメント)」の側面をもちます。加害者が教職員で、被害者が学生や院生というケースが典型的です。拒否することで成績上の不利益を受けるのではないか、などと学生側が恐れる状況であれば、ハラスメントになります。
今回のように指導教授が同室を求めることは、真にやむを得ない事情がない限り、セクハラないしアカハラ行為と認定されると思います。実際に何らかの性的な行為があったかどうかは、認定を左右するものではありません。
もっとも、「停職6カ月」は処分の中では重いものですから、処分の妥当性は議論になるかもしれません。性的関係(の求め)が一切ないとすれば重すぎるとも考えられますし、ほかの女子学生にも同室を提案しているなどの事情をふまえ、妥当な判断がなされたとも考えられます。報道内容だけからは何とも言えないところです。
もし比例原則(過去の処分例に比較してどうか、言動との関係で不相当に重い処分ではないか)に違反していれば、大学の処分権限の逸脱・濫用が問題になります。この場合、准教諭は裁判で処分の取消しを求められる可能性があります。