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子どもの「体罰」「しつけ」を法律でどう定義する? 児童福祉法改正案めぐり議論
シンポジウムの様子

子どもの「体罰」「しつけ」を法律でどう定義する? 児童福祉法改正案めぐり議論

児童虐待問題に取り組むNPO法人・児童虐待防止全国ネットワークが5月上旬、今国会での成立に向けて議論が続いている児童福祉法改正案を考えるシンポジウムを都内で開催した。児童相談センターの職員や児童虐待問題に取り組む自治体職員らが登壇し、児童虐待を防ぐために、改正案をどう活かすべきか、意見を交わした。

●児童の「権利」を正面から認めた

改正法案では、監護・教育のために必要な範囲を超えて児童を懲戒してはならないことや、県、市町村など自治体の役割の明確化、児童相談所へ弁護士を配置することなどが盛り込まれた。

児童虐待防止全国ネットワークの吉田恒雄理事長は、改正法で児童の養育・保護・成長などについて「等しく保障される権利を有する」と、明確に「権利」が明記されたことについて、「児童の権利を正面から承認したことは大きく評価できる」と語った。

一方で、親の子どもに対する懲戒権について、「監護及び教育に必要な範囲を超えて当該児童を懲戒してはならない」と明記し、一定の制限を設けたことは評価しつつも、体罰やしつけの定義が不明確なままである点に懸念を表明した。

「国連の権利委員会から、子どもに対する体罰およびあらゆる形態の品位を傷つける取り扱いを法律によって明示的に禁止するよう勧告を受けている。これに対して日本政府はどう答えていくのか。体罰としつけをどのように定義すればいいのか。体罰を肯定する国民意識が根強い中で、法律の中にどう盛り込めるかどうか、議論を続けてほしい」と訴えた。

●「崖から落ちないようにする対策こそ必要」

神奈川県茅ヶ崎市こども育成相談課の伊藤徳馬さんは、虐待の現状を「高い崖」にたとえ、児童相談所(児相)に負担が集中している現状を、児相の機能強化で対応しようとすることに疑問を投げかけた。

「その崖では、子どもが落ちる事故が起きる。子ども落ちてきたら大変だから、すぐに発見できるように救急車やヘリコプター、どちらで運ぶかすぐに判断できる体制をつくろうという話になる。『そうしないと、落ちてきた子を助けられない』と。

本来であれば、『崖から落ちないようにするためにはどうすればいいのか』という議論の方が生産的ではないか。『児相が大変そうだから』と児相の機能を強化しようという話になっている。(児童への対応が)余計後手に回るのではないかと心配している」

そのうえで、伊藤さんは自治体同士、自治体と児相の役割分担や、意思疎通が必要だと指摘。自治体ごとに異なっている用語の定義を統一する必要があると訴えた。

「たとえば、『要支援児童』という言葉があるが、市町村によって『要支援』の内容がバラバラなのが現状だ。こうした言葉がちゃんと定義されて、共有されないことに話が進まない。自治体によって定義がわかれている様々な言葉の定義をさだめて、共有する必要がある。言葉の基準が明確にされないと、実際の運用はうまく回らない」

(弁護士ドットコムニュース)

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