手りゅう弾など爆発物の模造品を公共の場に置く行為に対して、「6月以下の懲役か50万円以下の罰金を科す」――。そんな条例改正案が6月の福岡県議会に提出される見通しだ。日経新聞などの報道によると、今年4月に北九州市で手りゅう弾の模造品が見つかり騒ぎになった事件がきっかけという。
福岡県には、5つの指定暴力団があり、暴力団関係とみられる手りゅう弾事件が相次いで報道されている。ネット上では、漫画『北斗の拳』の架空の国になぞらえて、「修羅の国・福岡」などと呼ばれている。もちろん、現実の福岡は決して「修羅の国」ではない。
手りゅう弾の模造品まで取り締まる条例は、全国にも例がないという。たとえば、玩具の「手りゅう弾」が取り締まりの対象となれば、少し行き過ぎのようにも感じる。実際に条例が施行されたら、一般の県民にはどのような影響があるだろうか。福岡県出身で県内で活動する中島繁樹弁護士に解説してもらった。
●福岡県で多発している「手りゅう弾事件」
「条例改正が実現すると、おもちゃの手りゅう弾であっても、街頭や駅、デパー ト、電車・バスの中など『公共の場』に置いただけで、犯罪が成立することになります。このような条例は全国初ということですが、昨今の福岡県の状況からすると、実施もやむを得ないことと思われます」
このように中島弁護士は、条例改正の動きに理解を示す。
「なにしろ、福岡県では、手りゅう弾を投げ込む事件が2009年以降で10件も発生し、2人が死亡、1人が重傷を負っているのです。今年の4月には小倉駅前で手りゅう弾の模造品が見つかり、周辺が約3時間閉鎖されるという事態も起きています」
ほかの地域では想像しにくいが、福岡県では手りゅう弾をめぐる事件が社会問題化しているのだ。
「自宅でおもちゃの手りゅう弾を作ったり、持っていたりするのは、これまでどおり、全くおとがめがありません。ただ、それを人目につくところに置くことが禁止されることになるのです。
けん銃については、模造品であっても外形が著しく本物に類似するものは、持っているだけで処罰されます。これとの比較で言えば、模造の手りゅう弾に対する今回の規制はゆるやかなものといえ、やむを得ないと考えます」
このように中島弁護士は述べている。しかし、異例な条例であることは間違いない。福岡に住む中島弁護士も「このような条例が福岡県にだけ設けられるのは、県民として不名誉なことだと思います」と話している。