原付バイクで大阪市平野区の路上を走行していた男性が5月上旬の未明、道におかれていたコンクリートブロックに乗り上げ、肩や胸を打つケガをしていたことがわかった。
報道によると、現場には、コンクリートブロックとレンガ約20個が、車道と歩道計約14メートルの道幅いっぱいに、横一列に並べられていたそうだ。大阪府警は、何者かが意図的に置いたとみて、往来妨害罪の容疑で捜査しているという。
「往来妨害罪」という犯罪は、あまり聞きなれないが、いったいどんな罪なのだろうか。刑事事件にくわしい徳永博久弁護士に聞いた。
●過去に「ダイナマイトで橋を破壊」というケースも
「往来妨害罪は、交通の安全を守るため、公の交通機関または交通施設を侵害することを処罰しています。刑法124条1項で、次のように定められています。
『陸路、水路または橋を損壊し、または閉塞して往来の妨害を生じさせた者は、2年以下の懲役または20万円以下の罰金に処する』
人や自動車などが通行する道路・橋や、船舶が航行する水路などを物理的に破壊したり、障害物を置いて遮断して、往来を妨害した場合に、犯罪が成立します」
聞きなれない犯罪だが、過去にはどんなケースがあったのだろうか。
「過去の裁判例では、ある県の土木課長が国庫補助金を獲得する目的で橋梁を損壊した行為や、村長が国庫負担金で橋を架け替えてもらう目的でダイナマイトを用いて橋を破壊した行為が、往来妨害罪で処罰されています」
今回はけが人が出ているが、被害者がいなければ、罪にならないのだろうか。
「道路などを壊したり遮断したりすることによって、通行が困難になる状態が生じれば、罪になります。実際に妨害されたことまでは必要ではありません。
たとえば、深夜、誰も通らないような道を壊したとしても、罪にあたります」
●道路工事は「往来妨害」にならないのか?
通行を困難にするというのは、どんな場合をいうのだろうか。
「参考になる最高裁の判例があります。
約6メートルの県道の中央付近に、約4メートルの自動車を斜め横向きに置いたうえ、ガソリンをまいて、その自動車を炎上させたという事案です。
最高裁は、遮断されていない部分が約2メートル残っていても、通路の効用を阻害して、往来の危険を生じさせたと判断しました。
今回の事件では、道路上にブロックとレンガを道幅いっぱいに並べています。最高裁判例の基準からすれば、往来妨害罪が十分成立しうるでしょう」
通行を妨害すると罪になってしまうのだとしたら、道路工事は「往路妨害」にあたらないのだろうか。
「道路の管理者が、修繕のために一時的に道路の往来を妨げる行為は、正当行為として違法性が阻却されます。そのため、犯罪にはあたりません」
徳永弁護士はこのように述べていた。