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英検の「替え玉受験」発覚→教え子の大学合格が取り消しに…「合成写真」まで使った塾講師の手口
大阪地裁(PIXSTAR / PIXTA)

英検の「替え玉受験」発覚→教え子の大学合格が取り消しに…「合成写真」まで使った塾講師の手口

「どうしても合格させなければ…」。追い詰められた塾講師が選んだのは、教え子になりすまして英検を受ける「替え玉受験」だった。

英検に合格した後は、その結果を使って教え子が志望大学を受験。本人と講師の顔を合成した写真までつくり、実際に合格を果たした。

しかし、不正は思わぬところから発覚する。大学から届いた学生証に使われていたのが、受験時に提出した「合成写真」だったのだ。家族が不審に思って大学に相談し、合格は取り消された。

偽計業務妨害や私電磁的記録不正作出・同供用の罪に問われた塾講師に対し、大阪地裁は10月1日、拘禁刑2年、執行猶予4年(求刑・拘禁刑2年)の判決を言い渡した。

法廷では、被告人が3年間ほぼ休みなく働き、「早く生徒を合格させて、退塾させたい」と考えるほど疲弊していたことも明らかになった。

一方で、不正は今回が初めてではなく、過去には生徒のマークシートを書き換えていたという。

なぜ、生徒を教える立場の講師が、ここまでの不正に手を染めたのか。法廷で語られた経緯を追う。(裁判ライター・普通)

●「英検」で教え子になりすまし

被告人は30代の男性。検察官の冒頭陳述などによると、大学卒業後、会社員を経て、父親が経営する塾で講師として働き、その後大手予備校などで講師として働いていた。

法廷では、その塾で資格試験の試験官を担当した際、教え子のマークシートを書き換える不正をしていたことも明らかになった。

今回、替え玉受験の対象となったAさんも、被告人が指導する生徒だった。

Aさんの志望大学では、英検2級のスコアが入試で有利に働く仕組みがあった。Aさんは替え玉受験の3カ月前、自ら英検を受験して合格していたものの、志望校の入試で十分に有利になるほどのスコアではなかった。

被告人は、さらにスコアを引き上げるのは難しいと考え、替え玉受験を決意した。

Aさんから保険証を預かり、自分の顔写真などを使ってAさんになりすまし、英検を受験。その結果を大学受験に利用しようとした。

ただ、英検と大学受験で顔写真が違えば、不正が発覚するかもしれない。そこで被告人は、Aさんと自分の顔を合成した写真を作り、大学への出願に使わせた。

Aさんは志望校に合格した。

ところが、自宅に届いた学生証には、受験時に提出した合成写真が使われていた。Aさんの家族が不審に思って大学に相談したことで、不正が発覚。Aさんの合格は取り消された。

●「本人は教えるのが大好きなので」

公判には、被告人の母親が証人として出廷した。

「親としてきちんと倫理観を育ませられずに反省している」
「日常会話を重ねて、間違った方向へ行かぬよう責任を持って見ていく」
「被告人が背負う罪を一緒に背負っていく」

聞かれた質問に母親は淀みなく答えた。

事件後も、被告人は生徒への指導を続けている。そのことについて問われた母親は「良くないのかもしれないが、本人は教えるのが大好きなので、できるなら続けさせたい」と話した。

生徒を合格させるためとはいえ、その生徒になりすまして試験を受けた被告人。それでもなぜ、教育の仕事を続けようとするのか。

その理由は、続く被告人質問で本人の口から語られた。

●3年間ほぼ無休「どうしても合格させなければ」

弁護人による被告人質問では、当時の過酷な勤務状況も明らかになった。

被告人によると、勤務時間は少ない月でも約200時間、多い月には約320時間。週7日勤務で、3年間ほぼ休みがなく、次第に心身ともに疲弊していったという。

Aさんの志望大学では、得意科目の点数を2倍にして算出する入試方式があり、英検のスコアを利用できる仕組みがあった。

弁護人:それで、なんで替え玉なんてすることに?
被告人:授業を増やすなどして合格してほしいですが、時間を増やすのは物理的に厳しく、しかし、心身疲弊する中で、どうしても合格させなければと…。

弁護人:替え玉受験を持ちかけられたAさんの反応は?
被告人:普段は口数の少ない生徒なんですが「いいんですか?」「バレないんですか?」と。それで、大丈夫じゃないかと思った。

被告人はさらに、大学への出願手続きをしたのはAさんだったことや、合成写真の素材となる写真もAさんから受け取ったことなどを説明した。

しかし、替え玉受験そのものを提案したのは被告人だった。

●「早く合格させて、早く退塾させたい」

では、なぜ事件後も教育業界に残っているのか。

被告人はこう説明した。

「したことは教育業界への裏切りです。どう償うかを考えると、業界から離れるというのもありますが、誠実に向き合うべきではと考えました」

今後は過度な労働を避け、倫理観を持って仕事を続けていくという。

しかし、検察官からの質問では、替え玉受験に至ったもう一つの動機も浮かび上がった。

被告人は、不正が発覚する恐れを感じながらも「やり過ごしたい」という思いが強かったと説明した。

その意味を問われると、Aさんを早く大学に合格させ、早く塾を卒業させることで、自分の業務を軽減したかったという趣旨の説明をした。

検察官:あなたの仕事は、科目を教えられればいいってものではないのでは?
被告人:そうです。なので、今の受講生の親御様にも説明して、反面教師のように考えてもらえれば。

検察官:自分に指導する資格がないとは思わないんですか。
被告人:そのように考えることもありました。ただ、保護者に謝罪する中で、それでも指導してほしいと言われ、あるべき姿を再構成しようと。

被告人は、個別指導を担当していたすべての生徒の保護者に事件について説明したという。そのうえで、受講に不安を示した家庭とは契約を終了したと述べた。

一方、事件後、Aさんとは一切連絡を取っていない。Aさんが大学に支払った金銭がその後どうなったのかについても、把握していないという。

●裁判所「動機はあまりに身勝手」

大阪地裁は判決で、被告人が過去にもマークシートを書き換える不正をおこない、今回の替え玉受験へと不正行為をエスカレートさせた点などを踏まえ、「犯情は悪い」と評価した。

そして、「生徒をどうしても合格させなければならない」「早く合格させて業務を軽減したい」と考えた末の犯行について、その動機は「あまりに身勝手」と指摘した。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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