女子生徒にわいせつ動画を送らせて拡散させたなどとして、警視庁が2月12日、日本大学第三高校(日大三高)の硬式野球部の男子部員2人を書類送検したことが報じられました。
読売新聞オンラインなどの報道によると、部員のうち1人が知人の女子生徒にわいせつ動画をSNSで送らせ、その動画を提供されたもう1人の部員が他の複数の部員に動画を提供したとされています。
未成年が書類送検された場合、今後どのような流れで刑事手続きが進むのでしょうか。少年事件の基本的な仕組みを解説します。
●書類送検とは?
刑事訴訟法246条本文は、警察が犯罪の捜査をしたときは、特別の定めがある場合を除き、速やかに書類および証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならないと定めています。
要するに、警察は捜査をしたら、原則として事件を検察に送る必要があります。これを「全件送致主義」といいます。
被疑者が逮捕されている場合、警察は48時間以内に、身柄とともに書類・証拠物を検察官に送ります(身柄送検)。
一方、今回のように逮捕されていない場合でも、同じく書類と証拠物とともに事件を検察官に送らなければなりません。これが「書類送検」です。
警察が捜査した以上、原則として送検されるのは制度上当たり前の流れです。したがって、「書類送検された=有罪になる可能性が高い」という意味ではありません。
●今回のケースでは何が問題とされた?
今回の報道では、部員の1人が女子生徒にわいせつな画像・動画を送らせ、もう1人がその動画を他の部員に提供した疑いがもたれているとされています。2人は任意の調べで容疑を認め、反省していると話しているそうです。
児童買春・児童ポルノ禁止法は、児童の心身の保護を目的として、児童の姿態を記録した写真や動画の製造・提供などを禁じています。製造(法7条3項)や提供(法7条2項)であれば3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。報道されている行為が事実であれば、同法違反に該当する可能性があります。
いずれにせよ、警察が捜査をおこなった以上、書類送検されるのは特別なことではありません。
●今後の手続きの流れは?
送検された2人は高校の部員であり、20歳未満の少年に該当します。なお、民法上成人年齢は18歳ですが(民法4条)、少年法上は、20歳未満の者を「少年」としており(少年法2条1項)、大人の刑事事件とは違う手続きになります。
まず、書類送検により検察官に引き継がれた事件は、その後家庭裁判所に送致されます(少年法42条)。こちらも全件送致主義といいますが、先に説明した警察官から検察官への「書類送検」の際の説明とは意味が異なります。その後は家庭裁判所が事件を扱います。
家庭裁判所では、少年の性格や育った環境、事件の背景などを調査します。今回のように身柄を拘束されていない場合、そのまま在宅で調査が行われることが多いです。
調査の結果、少年審判を開くかどうかが決まります。非行事実が認められない場合や、調査の過程で立ち直りが見込まれる場合などには、審判を開かずに「審判不開始」となり、手続きが終了することもあります。
少年審判が開かれた場合、裁判官は最終的な処分を決めます。具体的には、「不処分」(処分なしで終了)、「保護観察」(保護司の指導を受けながら生活する)、「少年院送致」(少年院で教育を受ける)、「検察官送致(逆送)」(大人と同様の刑事裁判に移す)があります。
事件の重大性などから刑事処分が相当と判断された場合には、「逆送」といって、検察官にもう一度身柄を送り、検察官の処分に委ねることになります。
最初に検察官から家庭裁判所に送致された事件が、今度は家庭裁判所から検察官に送致されるため「逆送」と呼ばれています。
検察官が起訴すれば刑事裁判が開かれ、有罪となれば刑罰が科されることもあります。一方、審判不開始や不処分となれば、保護処分は受けずに手続きが終わります。
少年事件の手続きの流れ(弁護士ドットコムニュース編集部作成)
● 実際に処分される可能性は?
裁判所の公表データ(裁判所データブック2025)では、家庭裁判所が実質的に処分の要否を判断した事件のうち、審判不開始と不処分を合わせた割合は約65%にのぼります。このデータには身柄拘束されていた場合と、されていない場合(在宅)が含まれています。在宅で調査される事件では、処分が軽くなる傾向があります。
そうすると、データの上では審判不開始や不処分になる可能性の方が高いことになりそうです。
ただ、具体的な事情によるところが大きい事には注意が必要です。たとえばどういう経緯で動画が撮影・送信されたのか、送信された動画の内容、どのように拡散したのか、その後の拡散の状況など、現時点でははっきりしない部分が非常に多いといえます。
今回の事件でどのような結論になるかは、今後の捜査や、家庭裁判所の調査と判断次第です。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)