国士舘大学男子柔道部の寮で、部員6人が大麻使用に関与していた疑いがもたれている事件で、警視庁は6月16日、麻薬取締法違反容疑で寮を家宅捜索し、植物片や吸引器具を押収したという報道(読売新聞オンラインなど)がありました。
全国有数の強豪として知られる柔道部での集団薬物使用という衝撃的な事件。どのような法的責任が問われるのでしょうか。
●この記事のまとめ
・高濃度のΔ9-THCが含まれる大麻の使用は「施用罪」として7年以下の拘禁刑が科される可能性 ・尿検査で陰性の場合、自白だけで「施用罪」として有罪とすることはできない
●全国優勝経験もある名門柔道部で起きた事件
報道によると、警視庁は6月16日、東京都町田市にある同大学町田キャンパスの寮を家宅捜索。その際、植物片や吸引器具を押収したといいます。
また、数人の尿からは大麻由来の成分が検出されたそうで、部員らは、大麻の使用を認めているとのことです。
●大麻の「使用」も処罰される改正が行われた
以前は、大麻の「所持」「譲渡」「栽培」などは、「大麻取締法」という法律で禁じられていましたが、「使用」については処罰規定はありませんでした。
また、「大麻」と「麻薬」は区別され、それぞれ「大麻取締法」「麻薬及び向精神薬取締法」という別の法律による規制が行われていました。
2024年12月12日に、これらの法律につき改正法が施行されました。この改正はかなり細かい内容も含んでいるのですが、「使用」の処罰についておおざっぱにいうと、大麻草に含まれる「Δ9-THC」(テトラヒドロカンナビノール)の含有量が一定以上のものを「麻薬」と取り扱うことになりました。
これにより、Δ9-THCの含有量が一定以上の大麻の使用に対し、「麻薬及び向精神薬取締法」上の「施用罪」(27条1項)が適用されるようになりました。違反した場合、7年以下の拘禁刑(同法第66条の2)となります。
●大麻が尿中から検出されなかった人はどうなる?
今回の事件では、「一部の部員の尿から」大麻の成分が検出されたと報道されています。
尿検査で陽性反応が出た部員については、有罪認定される可能性が高いといえます。
ただし、令和6年(2024年)版の犯罪白書によれば、麻薬取締法の起訴率は令和5年(2023年)で60.1%となっており、起訴されない可能性もあります。
また、起訴されたとしても、初犯で反省もしているということであれば、執行猶予付きの判決が下される可能性が高いと考えられます。
他方で、尿検査が陰性だった部員については、「使用」の立証が難しくなります。
報道によれば、これらの部員も大麻の使用は認めているようですが、刑事裁判では、本人の自白のみで有罪とすることはできないことになっています(憲法38条3項、刑事訴訟法319条2項)。
今後、「使用」の立証について、たとえば毛髪検査などの捜査も進められると思われます。 また、先にも書きましたが、使用とは別に「所持」も処罰されますので、そういった観点からの捜査も進められていくと考えられます。
なお、事情によっては共犯(共同正犯や幇助犯)として処罰される可能性はあります。