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祖父母や高齢女性を殺害…相次ぐ少年事件 逮捕された未成年の手続きはどう進む?
少年事件の流れ(弁護士ドットコムニュース編集部作成)

祖父母や高齢女性を殺害…相次ぐ少年事件 逮捕された未成年の手続きはどう進む?

未成年による事件が相次いで起きました。

5月9日、愛知県田原市の住宅で70代夫婦が死亡しているのが発見され、16歳の孫が祖父に対する殺人の疑いで逮捕されました。時事通信などの報道によれば、少年は容疑を認めていると言います。

5月11日にも、千葉県千葉市で84歳の女性が背中を刃物で刺されるなどして死亡し、現場の近くに住む15歳の中学生が殺人の疑いで逮捕されました。少年は容疑を認めているとNHKなどが報じています。

事件を受け、SNSなどでは事件について様々な声が上がっています。中には「少年法を念頭に置いて、他人に危害を加える人もいる」などと、少年が法律によって守られているため犯罪につながっているという主旨の指摘も見られました。

しかし少年であっても、大人と同様に逮捕・勾留され、刑事手続きに移行する場合もあります。今後どのように手続きが進んでいくのでしょうか。解説してみました。

●逮捕・勾留までは通常の裁判と同じ

少年でも、成人でも、逮捕から勾留されるまでの流れは、基本的には同じです。

警察が逮捕し、48時間以内に検察に身柄を送られ、そこから24時間以内に勾留請求がされます。

勾留が認められれば、延長も含めると最大で20日間身柄を拘束されます。

画像タイトル 少年事件の流れ(弁護士ドットコムニュース編集部作成)

●その後の少年事件の流れ

成人の場合、勾留後、検察官が起訴するかしないかを判断し、起訴すれば刑事裁判になります。

しかし、少年の場合には、勾留後すぐに起訴・不起訴が決められるのではなく、家庭裁判所に身柄を送られます(家裁送致)。

家庭裁判所では、少年と裁判官が面接します。この後、1)観護措置決定が下されて、少年が少年鑑別所に送られるか、2)在宅観護とするか、3)審判不開始とするか、が決められます。

少年鑑別所に送られた場合、少年は最大で8週間収容されます。

家庭裁判所で必要な調査がされた後、少年審判で「不処分」「保護観察」「少年院送致」などの処分が決められます。

このように、少年事件では家庭裁判所が対応することになります。成人の刑事事件に家庭裁判所が関わることはないため、ここは大きな違いです。

この制度は、未成熟な子どもに対しては、特に保護と教育が必要という考えに基づいています。

画像タイトル 少年審判の様子(家庭裁判所リーフレット「少年審判について」のイメージ図をChatGPTにより加工)

●犯行時「16歳」と「15歳」の大きな違い

少年法では、少年の刑事事件について特別な手続を定めています。

もっとも、事件によっては、少年であっても通常の刑事裁判を受けることがあります。

少年法20条2項は、「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの」について、原則として検察官に送致しなければならないと規定しています。

画像タイトル 少年法20条(弁護士ドットコムニュース編集部作成)

愛知県田原市の祖父母殺害事件では、報道によれば逮捕された少年は16歳とのことです。行為時も16歳であれば原則逆送対象事件となるため、通常の刑事裁判手続が行われることになります。

他方、千葉県の事件では、逮捕された少年は15歳とのことですから、原則逆送が必要になる事件というわけではありません。

もっとも、逆送対象事件でなくても、裁判所が刑事処分を相当と認めれば、逆送することはあり得ます(少年法20条1項)。したがって、千葉県の事件も家庭裁判所の判断で刑事裁判になることはあり得ます。

小倉匡洋 弁護士ドットコムニュース編集部・弁護士。法政大学法科大学院特任講師(刑事法)(〜現職)、2016年より、厚生労働省の各種技術審査委員を歴任(労働契約関係、働き方改革、労働保険等)(〜現職)。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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