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「刑務官からスプレーかけられ全裸撮影」の相談も 弁護士らが緊急会見「氷山の一角だ」
オンラインで緊急会見する海渡弁護士(監獄人権センターのzoom画面より)

「刑務官からスプレーかけられ全裸撮影」の相談も 弁護士らが緊急会見「氷山の一角だ」

受刑者への暴行や留置施設での死亡事案が愛知県内で相次いで明らかになったことを受け、NPO法人監獄人権センターは12月21日、刑事司法の現場から暴力を根絶することを求める緊急声明を出した。

記者会見では、同センターに名古屋刑務所での22人の刑務官による暴行案件以外にも男性受刑者から相談が寄せられたと明かした。

事務局長の大野鉄平弁護士によると、6〜7月ごろに刑務官から催涙スプレーをかけられた上で全裸で保護室に収容され、その様子を動画撮影されたと訴えているという。

センター代表の海渡雄一弁護士は「今回の事案は氷山の一角ではないか。たくさんの情報が寄せられており、全国で起きていた可能性がある。徹底的に反省してほしい」と指摘し、第三者による徹底的な調査が必要だと訴えた。

●また名古屋刑務所で…悔しさにじむ

名古屋刑務所は、2001~2002年に複数の受刑者が死傷する事件が起き、行刑改革が進められるきっかけとなった場所だ。100年ぶりの監獄法の全面改正、刑事収容者施設法成立に尽力してきた海渡弁護士は悔しさをにじませた。

「組織的な暴力に対する(刑事施設視察委員会の設置、不服申し立ての制度など)未然防止措置を作ったにもかかわらず、再び起きてしまったことが本当にショックです。何のために改正したのかという気持ちでいっぱい」

朝日新聞によると、弁護士や医師でつくる視察委員会が今年3月に「複数の受刑者から職員への不満が複数ある」と指摘したが、刑務所側は内部調査の結果「不当な扱いはなかった」と否定。委員会は、所長に第三者による調査などを求めていた。法務省の発表では暴行は2021年11月上旬~今年8月下旬とされており、指摘以降も続いていたことになる。

海渡弁護士は「委員会の趣旨は立派に機能した。が、重大なことだという認識がなく措置を取らなかった刑務所の側の問題です。きちんと耳を傾けている刑務所もあります。法務省は意見を反映するよう通達を出したが、法律制度の上でも行うようにしてほしい」と話し、刑事施設の長に義務として改善するよう求めるべきだとした。

●留置場の医療不備により命が失われている

また、愛知県警岡崎署の留置場で勾留中の男性が亡くなったことについては、医療体制の不備を指摘した。男性は延べ140時間以上にわたり「戒具」と呼ばれるベルト型の手錠や捕縄で縛られていたほか、複数の署員から暴行を受けていたとされる。統合失調症と糖尿病の持病があった。

「薬も水も与えられなかったというのは、恐るべき虐待状態。医療的措置があれば、絶対に起きなかった。人の命が失われてはならない。何カ月もいても医者がいない状態の(刑事施設に代えて留置施設で勾留する)代用監獄は廃止すべきです」(海渡弁護士)

声明は▽全国的な暴力事案の調査・解明▽医療へのアクセスの確保▽視察委員会の権限の強化と国内人権機関の設置ーの3点を求めており、法務省矯正局と警察庁に送付する。「暴力の支配する矯正処遇は再犯を誘発する恐れが高まるだけである。受刑者は人として尊重されてこそ、更生への意欲が高まり、よりよい社会復帰、再犯防止に繋がるのである」と締めくくっている。

会見は記者ら30人以上が参加した。同センターのYouTubeで視聴できる。

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