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「事件をもう一度話して」は「もう一度体験して」と同じ…犯罪被害、自治体の支援策は
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「事件をもう一度話して」は「もう一度体験して」と同じ…犯罪被害、自治体の支援策は

犯罪被害者のために自治体はどんな支援をすべきかーー。日本弁護士連合会(日弁連)は12月26日、東京・霞が関の弁護士会館で、自治体関係者や弁護士らに向けて、犯罪被害者支援のあり方について議論するセミナーを開催した。

日弁連法務研究財団がつくった犯罪被害者支援のモデル条例案を題材に、兵庫県明石市の泉房穂市長や、日弁連犯罪被害者支援委員会副委員長の武内大徳弁護士など、犯罪被害者支援に取り組む有識者が登壇し、課題を語った。

●「県で条例が定めてあるから、市ではいらない」ということにはならない。

2005年に制定された犯罪被害者等基本法により、犯罪被害者支援は条例制定など、自治体の「責務」とされたが、努力義務にとどまるため、その実現に向けた取り組みは自治体によって温度差がある。

明石市では、2011年に犯罪被害者支援条例を制定した。2014年の改正で、殺人事件などの加害者が被害者側に損害賠償を支払わない場合、市が立て替え払いする制度を全国ではじめて盛り込むなど、先進的な取り組みを推進している。

泉市長は、「国や県よりも被害者に近い距離にあって、寄り添うことができる自治体が(犯罪被害者を)支援すべきだ」と市町村単位で犯罪被害者支援条例を定め、被害者を支援する制度を構築する重要性を語った。

「『県で条例が定めてあるから、市ではいらない』ということにはならない。県には県の役割があるが、犯罪被害者の生活に近いのは市町村だ。市民は一般的に県庁の窓口に行ったりしない。市(町村)の役所の窓口に、被害者支援の担当者がいることが重要だ」。

●「事件をもう一度話してください」は「事件をもう一度体験してください」と同じ

武内弁護士は、被害者から「いろいろな相談窓口で、事件の体験を何度も話すことが苦痛」と吐露された体験から、被害者支援を行う上で、警察からの情報提供が重要だと指摘した。

刑事訴訟法の定めで、裁判が始まる前の捜査情報は、特別な理由がなければ公にすることはできない。そのため、犯罪被害者支援のために、市の担当者などが事件の概要を警察に問い合わせても、答えがないことがある。

その結果、さまざまな場面で被害者が事件のことを繰り返し説明しなければならないケースがあり、そのことが被害者の負担になっているという。

「『事件のことをもう一度話してください』ということは、『事件をもう一度体験してください』と言っているのと同じだ。概略だけでも担当の弁護士に伝わっていければ、『今回はたいへんな被害でしたね。ここでは一(いち)から話さなくて大丈夫ですよ』とスッと相談に入っていける。被害者としても、『ちゃんと話が通ってる。たらいまわしにされたわけではないんだ』ということで、相談をリファー(紹介)した自治体の信頼も高まっていく」。

武内弁護士は、刑事訴訟法との関係で難しさがあることは指摘しつつも、「必要最小限度でいいので、運用で可能な範囲で情報提供をしてほしい」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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