東京・池袋の繁華街で女性に声をかけて、風俗店での仕事を紹介したとして、スカウトグループの代表とメンバー合わせて5人が2月上旬、職業安定法違反(有害業務の紹介)の疑いで警視庁に逮捕された。
報道によると、代表らは2015年、JR池袋駅近くの路上で、20代の女性に声をかけて、水戸市のソープランドが売春をさせていると知りながら、経営者に紹介した疑いが持たれている。代表らはソープランド側から女性の紹介料を受け取っていたという。
繁華街で、若い女性に声をかけるスカウトの存在はよく聞くが、今回摘発されたのは、どこがポイントなのだろうか。ソープランドに紹介した点が問題とされたのだろうか。古川穣史弁護士に聞いた。
●売春・風俗・AV撮影への職業紹介が禁止されている
「今回のケースで問題となっているのは、ソープランドのスカウトです。このようなスカウトの場合、法的な規制として、まず職業安定法があります。
この法律では、公衆衛生または公衆道徳上『有害な業務』への職業紹介などが禁止されています。そして、裁判例により、売春・風俗・AV撮影などが『公衆道徳上有害な業務』にあたると判断されています。
また、許可なく、紹介料をもらって職業紹介事業をおこなうことも法律に違反する可能性があります」
古川弁護士はこのように述べる。ほかにはどのような規制があるのだろうか。
「また、各都道府県の迷惑防止条例にも規制があります。東京都の迷惑防止条例では、売春・風俗・AV撮影のスカウトのみならず、キャバクラの従業員(キャバ嬢)のスカウトなども規制の対象になっています。
さらに、今回問題となっている豊島区では、区の条例としても規制の対象となっています。ただし、区の条例は、主にキャバクラや居酒屋などの客引きの対策としてつくられた経緯があります」
●「性交類似行為」をおこなう業務も「有害」とされる
今回の逮捕容疑となった職業安定法の「有害な業務」とはどういうものなのか。
「性交がある『売春』だけでなく、風営法上適法とされる『性交類似行為』をおこなう業務も含まれるというのが、これまでの裁判例です。
したがって、風営法上適法なものであっても、道徳的にみて『有害な業務』と判断されることがあります。そのため、このような業務では職業紹介をすることは認められていません。ただ、広告などで人を募集することはできます」
いわゆるキャバクラのスカウトも違法となるのだろうか。
一般にスカウトは、ナンパとの区別が難しく、『単にナンパで声をかけた』というような言い訳を述べるケースが多く、しっかりとした裏付けがないと最終的に裁判に持ち込むのは難しいです。
しかし、売春や風俗のスカウトの仕事は、時として、働く人の意思を無視して、人身売買に近いことが行われている実態があります。そういった行為は厳に慎むべきでしょう」
古川弁護士はこのように話していた。