嗜好用大麻の解禁が広がるアメリカで、「大麻ツーリズム」が盛り上がっている。使用が禁止されている州や国々から「大麻を試してみたい」と多くの人が訪れているという。
フォーブスジャパンによると、解禁から約2年がたつコロラド州やワシントン州などで観光客が急増中。大麻の栽培現場や販売店などをめぐるツアーが人気になっているという。関連のビジネスも成長しており、大麻が吸えるロッジを網羅する情報サイトなどもあるそうだ。
ネットでは、「夏にでも行ってくるかな」といった反応のほか、「海外で合法的に大麻を使用すれば帰国後逮捕される事はない」など、合法の国なら問題ないとする書き込みも見られる。
本当に日本人がツアーに参加し、大麻を買っても帰国後、逮捕されることはないのだろうか。中村勉弁護士に聞いた。
●「大麻取締法」は合法国での行為にも適用される
「まず、国内の場合を考えましょう。日本の大麻取締法には、大麻の所持・譲り受け・譲り渡しを処罰する規定はあるものの、『使用』を処罰する規定が存在しません。よって、大麻の使用自体は処罰されません。
しかし、現実的に考えると、使用するためには何らかの方法で大麻を入手しなければなりませんよね。通常は、譲り受け等を行うことになるので、日本国内では、大麻を使用する過程で大麻取締法に抵触することになるのが通常です」
では、大麻の購入を合法化している国で、日本人が大麻を購入した場合はどうなるのか。
「大麻取締法は、所持・譲り受け・譲り渡しの罪については、『刑法第二条の例に従う』と規定しています(大麻取締法第24条の8)。刑法第2条とは、日本国外での行為について、日本国民が日本で処罰される場合を定める規定です。
つまり、大麻の所持・譲り受け・譲り渡しの罪については、日本国外で行われた場合であっても、法律的には大麻取締法違反として処罰されることになります。大麻が合法化されている国だからといって、日本国民が大麻を購入することは、認められていないのです」
「もっとも」と言って、中村弁護士はこう続ける。
「実際には、海外での裏付け捜査が困難であるなどの理由から、日本国外での大麻の譲り受けなどを理由に処罰された例は見当たりません。たとえ、SNSやブログで大麻の購入の証拠をアップロードするなどした場合であっても、購入した物が大麻であることの裏付け、つまり鑑定書などの証拠がなければ立件は困難と考えられます。
とは言え、違法な行為であるのは間違いなく、また、海外での使用体験が、帰国後の日本での継続使用を誘引し、常習者となって、結果的に刑務所行きとなる大きなリスクがあるので、絶対に手を出すべきではないでしょう」