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野球場で女子大生「チアリーディング」撮影して書類送検…なぜ盗撮と判断された?
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野球場で女子大生「チアリーディング」撮影して書類送検…なぜ盗撮と判断された?

野球場でチアリーダーの女子大学生を盗撮したとして、京都府警は2月2日、迷惑行為防止条例違反の疑いで大阪府茨木市の会社員の男性(50)を書類送検した。

報道によると、容疑は、2016年10月21日、京都市のわかさスタジアム京都のスタンドで、大学野球の試合を応援しているチアリーダー部員の太ももやスカートの中などを小型のビデオカメラで撮影した疑い。

警察が押収したSDカードには、チアリーダーが撮影された動画データが100本以上はいっていた。「チアリーダーに性的興味があった」と容疑を認めているという。2、3年前から京都や関東の競技場でチアリーダーの撮影を繰り返していたとみられている。

カメラに上着をかぶせ、太ももをズームアップしていたことなどから、単なる応援風景の撮影ではなく盗撮と判断されたということだが、法的に考えて、どんな場合が盗撮にあたるのか。富永洋一弁護士に聞いた。

●「卑わいな行為」として処罰される可能性

「まず、いわゆる迷惑行為防止条例は、日本全国で通用する『法律』ではありません。

あくまでも都道府県や市町村ごとの『条例』ですので、内容は似かよってはいますが、各自治体の条例の規定の仕方によって、処罰の対象となる行為が異なります。

迷惑行為防止条例をもってしても、単に迷惑な行為というだけで処罰することはできません。

迷惑行為防止条例に規定されている具体的な迷惑行為に該当する場合だけ、逮捕されたり、処罰の対象となるのです」

富永弁護士はこのように述べる。京都府の条例では、どんな場合に盗撮にあたるとされるのか。

「京都府の迷惑行為防止条例では、次のような行為が、『卑わいな行為』として処罰の対象と規定されています。

(1)『公共の場所』や『公衆の目に触れるような場所』で、

(2)『他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法』で、

(3)『みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること』

下着『等』と規定されているのがミソで、下着に限らず『身体の一部』を撮影する行為も含まれます。

ですから、下着を盗撮したわけでなくても、撮影した身体の箇所や、撮影時間、被写体との距離などによっては、『著しい羞恥、嫌悪』を覚えさせるものとして、処罰の対象となり得ます」

今回、書類送検に至った理由は、いくつかあると考えられるが、可能性としてどんなものがありうるのだろうか。

「今回の事件では、ターゲットになっていたのは、プロの職業チアリーダーではなく、大学野球のチアリーダーということでした。

学生の方ということもり、『羞恥、嫌悪』を覚えさせる撮影行為から、より保護されるべきと当局が判断した可能性はあると思います(もちろん、だからといって、職業チアリーダーの方を同様に撮影することが許されるというわけではありません)」

罪の重さはどの程度なのか。

「京都府の条例の場合、このような行為について、1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が設けられており、さらに常習性がある場合は、2年以下の懲役または100万円以下の罰金と、刑が重くなります。

ちなみに、京都府の迷惑行為防止条例では、それ以外の様々な『卑わいな行為』についても罰則をもって禁止されており、例えば、公共の場所で『性的な感情を刺激する言葉を発すること』などについても罰則規定があるようです」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

富永 洋一
富永 洋一(とみなが よういち)弁護士 ありあけ法律事務所
東京大学法学部卒業。平成15年に弁護士登録。所属事務所は佐賀市にあり、弁護士1名で構成。交通事故、離婚問題、債務整理、相続、労働事件、消費者問題等を取り扱っている。

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