妻に半年間セックスを断られ続け、我慢しきれず風俗に行ったら、バレて家を追い出された。意味分からんよな――。そんな「2ちゃんねる」の書き込みが議論を呼んだ。
投稿者は「嫁の言い分が自己中心的」「ようは『私はセックスもしたくないし慰めるの手伝わないけど他の女とやるのはいかん』って事」「本当に意味わからん」と、妻への不満を語っている。この投稿にはさまざまな反応があったが、その中に「離婚裁判になると君負けるよ?」という指摘もあった。
投稿者は「何で? あちらが原因じゃないの?」と納得がいかない様子だが、もし妻が「夫が風俗に行ったので離婚したい」と裁判に訴えたら、夫の側は負けてしまうのだろうか。男女の法律問題にくわしい長瀬佑志弁護士に聞いた。
●風俗に行くのは「不貞行為」
「風俗に行くことは、不貞行為として離婚の原因になります(民法770条1項1号)」
長瀬弁護士はキッパリとこう述べる。妻が「離婚したい」と裁判に訴えた場合、風俗に行った夫は劣勢に立たされるようだ。ただ、その場合、セックスを拒否されていたという事情は、考慮されないのだろうか?
「妻からセックスを拒否されていたとしても、風俗に行ったことが不貞にあたることは変わりません」
セックスレスは、不貞行為の言い訳にはならないわけだ。
●「本番」がなくても不貞
夫が「不貞行為にあたるなんてまったく思っていなかった。風俗は遊びだった」と主張しても、裁判では通用しないのだろうか。
「不貞の有無は客観的な事実を基に判断します。夫の主観で判断されるわけではありません。夫側が『あくまで遊びだった』と訴えても、裁判所が認めてくれるかというと、疑問です」
ところで、いわゆる「本番行為」のない性的サービスを受けることも、不貞にあたるのだろうか。
「不貞には、『性交』だけでなく『性交類似行為』も含まれます。いわゆる『本番行為』がない風俗であっても、不貞にあたるとされています」
そうなると結論としては、妻と離婚したくない夫は「風俗に行かないほうがいい」ということだろう。
●夫は「苦しい立場」に・・・
不貞行為となるということは、慰謝料を要求される可能性もあるのだろうか?
「そうですね。慰謝料も覚悟しておくべきでしょう。
長い期間セックスを拒否され続けて、夫が風俗に行く前から『婚姻関係が破綻していた』というのであれば話は別ですが、婚姻関係が破綻していたと認められるためには、通常は別居していることが求められます。
同居していて、セックスレス以外に特殊な事情がないとすれば、夫側は苦しい立場にあると言えます」
長瀬弁護士はこのように述べていた。