2000年代にドキュメンタリー番組で子だくさん家族としての密着取材をうけ、「ビッグダディ」として有名な林下清志さん(57)が、家族の借金を返済していることを打ち明けて、話題になっている。
NEWSポストセブンによると、三男が金銭トラブルに巻き込まれて失踪し、2年前から林下家で1700万円の借金を背負うことになったそうだ。半年ほど、ビッグダディは、子どもたちから月3万円ずつ集めた後、2020年に都内のステーキ店に就職。コンビニ正社員の長男とともに借金を返済してきた。
現在、ビッグダディは無職になったが、四男が長男と同じコンビニで働きはじめ、返済を進めている。ビッグダディの再就職の予定もあって、借金は来年11月には返し終える予定だという。
一家で返済に奮闘するという、新たなドラマが生まれているが、そもそも、成人した子どもの借金について、家族やきょうだいが返済する義務はあるのだろうか。また今後、三男に対して、返済を求めることは可能か。濵門俊也弁護士に聞いた。
●ビッグダディ一家が三男の借金を返す義務はない
家族が返済する義務はあるのか。
「1700万円もの多額の借金を来年11月に完済予定とは、ビッグダディとその家族のバイタリティには頭が下がります。
成人した子どもの借金について、家族が返済する法律上の義務はありません。ですから今回は、『第三者による弁済』(民法474条)ということとなります。
ビッグダディとその家族は、三男の借金弁済について、正当な法律上の利益をもつ者ではありません。よって、債務者の意思(民法474条2項本文)や債権者の意思(民法474条3項本文)に反して弁済はできません。
ただし、今回のケースでは、債務者である三男も債権者も、ビッグダディらからの弁済を受け入れていることがうかがえますから、大きな問題ではないでしょう」
●ビッグダディは三男に返済を求めることができる
今後、ビッグダディと家族は、三男に対して返済を求めることができるのか。
「結論から申し上げますと、『できます』。
少し混み入った説明になりますが、債務者のために弁済した者は、債権者に代位します(民法499条)。ビッグダディとその家族は、弁済について正当な法律上の利益を有する者ではありませんので、民法467条の債権譲渡の規定が準用されます(民法500条)。
そして、ビッグダディとその家族は、三男に対し、求償権を行使できます(民法501条)。
以上が法律上の扱いですが、ビッグダディは『帰ってきたら迎えてやれ』と言っているようですし、実際に求償権が行使されることはないでしょう」