
「法的な最適解」と「依頼者の思い」どちらも実現することを目指して、依頼者に寄り添う
理系の論理的思考を活かして法律職を目指す
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
大学は理系に進んだのですが、専門分野を選択する段階になって、理系の職業に就く自分の姿がまったくイメージできないことに気づき、文系に転向して資格を取得しようと決意しました。
弁護士資格に決めたのは、法律というものが理系における公式のように思えたからです。公式を学び、身に着け、応用することには馴染みがありましたから、理系専攻だった頃と近い感覚で勉強できるのではないかと思いました。
この見立ては、半分は正解で、残り半分は少し甘かったかもしれません。未知の分野を勉強するのは簡単ではなかったですし、実務で扱う案件は複雑で、公式を当てはめるように単純にはいかないことの方が多いですから。
インドで鍛えたコミュニケーション能力
ーー注力分野とその分野に注力している理由を教えてください。
二つあります。一つは、企業の海外進出支援および法律トラブル対応で、主にインドに関する事件を取り扱っています。
企業の海外進出支援および法律トラブル対応については、弁護士になって3年目の頃、インドの法律事務所で約1年半勤務したことが転機になりました。インドに進出する日本企業とインドの関係各所との間で調整や交渉を担う、いわゆるコーディネーター的なポジションを務めたのです。
言語、文化、歴史的背景の違いのため、現地の方々とのコミュニケーションにはとても苦労しましたが、工夫と改善を重ねるうちに鍛えられました。この経験を活かし、今後もさまざまな角度から日本と海外のビジネスに貢献したいと考えています。
もう一つは、相続事件です。
相続事件については、以前の所属先が企業法務に特化した法律事務所であったことが影響していると思います。企業法務とは、基本的に「トラブルを予防する」という視点を重んじる分野です。企業法務について学び、多くの事件に関わる中で、個人事件でも同じように「トラブルを予防する」分野が身近にあると気づきました。それが相続事件です。
私自身、親族が亡くなった際の相続手続きで悩んだ時期があります。振り返ってみると、当時の悩みのほとんどは、前もって対策を講じておけば親族間で揉めずに済んだものばかりでした。私のような思いをする方が少しでも減ってほしいーー。そんな気持ちで取り組んでいます。
ーー仕事をする上で心がけていることは何でしょうか。
「法的な最適解」と「依頼者の希望」が必ずしも一致しないのだと意識することです。
先ほども話したとおり、法律は、理系における公式に似た部分があります。法律という公式に、事実や条件や登場人物を代入していけば、ひとまずは「法的な最適解」を算出できるのです。
しかし、「依頼者の思い」は公式に代入できません。依頼者の胸のうちには、当事者にしかわからない思いが秘められている場合があります。たとえば、「これ以上手続きを進めても得るものがないとわかっていてもどうしても諦めきれない」「金銭的にはマイナスになっても、相手方を許せない」といった思いです。
「法的な最適解」を依頼者に押しつけて、「はい、これで解決です!」と言うだけでは、弁護士の仕事の価値はありません。「法的な最適解」と「依頼者の思い」の溝をどう埋めるか、どう近づけていくかが腕の見せどころだと思っています。正解は一つではありません。一件一件の事件に向き合いながら取り組む課題だと思っています。
インドの生活で鍛えられたコミュニケーション能力が、このような弁護士の仕事にも生かされています。相手の立場や感情を想像する、自分の説明や表現にわかりづらい点がないか反省する、改善の余地があれば工夫する。どれもごく基本的なことですが、すべての事件処理に共通して必要なスキルだと感じています。
依頼者の思いを汲む弁護士を目指して
ーー弁護士として活動をされてきた中で、印象に残っているエピソードを教えてください。
相続事件を扱っていると、本当にさまざまな人間関係に出会います。どれかひとつの事件がずば抜けて印象に残っているというよりは、すべての事件、すべての依頼者が忘れがたいですね。
たとえば、自分を虐待した親を憎みつづけて苦しんでいる方や、兄弟間での金銭トラブルで辛い状況に陥っている方もいました。ひとつとして同じ家族はなく、同じ事件もないということを、日々痛感しています。
事件が無事に解決して、依頼者の生活から不安を取り除けたときにはやりがいを感じます。私の仕事内容に満足してもらえると、ホッとしますね。
ーープライベートについても伺います。休日はどのようにお過ごしですか。
自宅でのんびりしていることが多いですね。毎週金曜日の夜に社会人向けの柔道サークルに参加しているのですが、その影響で翌日以降は筋肉痛がひどくて。なので、土日はひたすら体を休める日です。スポーツは良い気分転換になっていますよ。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
企業の海外進出支援および法律トラブル対応と相続案件に、今まで以上に力を入れていきたいです。それに加えて、先ほどお話しした「法的な最適解」と「依頼者の思い」を近づける技術に長けた弁護士になることが、長期的な目標と言えますね。
ーー法律トラブルを抱えて悩んでいる方へメッセージをお願いします。
法律トラブルは、あらかじめ手を打っておけばダメージを最小限に抑えられますし、状況によってはトラブルの発生そのものを防げる場合もあります。初回の電話相談は15分間無料で行っていますので、どうぞお気軽にご連絡ください。