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海外で相次ぐ「連続爆破テロ」、パックツアーをキャンセルすることはできるか?
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海外で相次ぐ「連続爆破テロ」、パックツアーをキャンセルすることはできるか?

ベルギーの首都ブリュッセルの空港や地下鉄で3月下旬、あいついで爆発テロが起きた。あわせて32人が亡くなり、日本人2人を含む300人以上が負傷した。

報道によると、過激派組織「イスラム国(ISIS)」が犯行声明を出した。昨年11月に仏パリで起きた同時多発テロの実行犯らが、数日前にブリュッセルで逮捕されており、報復の可能性もあるとみられているという。

ベルギーは中世ヨーロッパの雰囲気が残る街並みや教会がある。テロ発生当時も、日本からの団体旅行客が滞在していた。日本人が負傷するなど、テロへの不安も広がるなか、旅行代理店を介してベルギー旅行を申し込んでいた人のなかには、急きょ取りやめるという人もいるかもしれない。

そのような場合、キャンセル料のあつかいはどうなるのだろうか。旅行に関する法律にくわしい小川弘恵弁護士に聞いた。

●キャンセル料を支払えばキャンセルできるのが原則

「旅行会社が航空券や宿泊先、観光案内などを手配する『パッケージツアー』(募集型企画旅行)の契約内容については、国土交通省の『標準旅行業約款』が参考にされています。この約款は、ほとんどの旅行会社が、旅行客との取引きの際に用いています」

旅行のキャンセルについて、どう決められているのだろうか。

「旅行会社は、旅行客からキャンセルされた場合について、この約款で定められた範囲内のキャンセル料を設定しています。そして、旅行客は原則、キャンセル料を支払えば、いつでも旅行契約をキャンセルできます」

●例外的にキャンセル料を支払わなくていい場合がある

キャンセル料を支払わなくていい場合はあるのだろうか。

「この約款では、例外的に、旅行者がキャンセル料を支払わずに旅行契約をキャンセルすることができる場合の規定があります。このうち、約款16条2項3号は次のように定めています

<天災地変、戦乱、暴動、宿泊期間等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が現実に不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きい場合>

つまり、キャンセル料を支払わずにキャンセルが認められるには、『天災地変などの事由が生じた場合』で、かつ『旅行の安全かつ円滑な実施が現実に不可能となる(または不可能となる恐れが極めて大きい)』ということが必要です」

その判断に基準はあるのだろうか。

「基準となる根拠は、法令・上記約款上には定めがないため、外務省が発表している『海外安全情報』や旅行先官公署、現地オペレーター等の情報などが参考にされています。

海外安全情報の区分には、レベル1からレベル4まであります。日本旅行業協会(JATA)では、海外安全情報についてのガイドラインが定めてあり、これによると『渡航中止勧告』(レベル3)や『退避勧告』(レベル4)であれば、キャンセル料なしで解除できます。

『渡航の是非検討』(レベル2)および『十分に注意する』(レベル1)であれば、その他の情報も含めて旅行者の安全確保について適切な対応を講じられるかを検討し、適切な対応が講じられるということであれば、旅行客からのキャンセルについては、キャンセル料が発生するということになります」

●ベルギーで起きたテロの場合は?

今回のベルギーのテロを受けて、旅行をキャンセルすることはできるのだろうか。

「今回のテロでは、ベルギーへの玄関口であるブリュッセル空港や地下鉄の駅が爆破され、多数の死傷者が発生し、その後、空港や地下鉄は閉鎖され、連続してテロが発生する可能性も懸念されていました。

こうした状況から考えると、テロ発生直後は、ブリュッセルにおける『旅行の安全かつ円滑な実施が現実に不可能(または不可能となる恐れが極めて大きい)』という状態にあったと思います。

そのため、今回のテロ発生直後に、日本からブリュッセルへ入るパッケージツアーを申し込んでいた旅行者は、キャンセル料を支払わずに旅行契約をキャンセルすることができたと考えます。

しかし、テロ発生から時間が経過したあとに、出発予定日がやってくる場合、もはや連続したテロのおそれはなくなり、運送・宿泊機関が正常に運行・営業を行っているという状況であれば、『旅行の安全かつ円滑な実施が不可能』ということまではいえません。

さらに、現在、海外安全情報において危険情報は出ていないことなどからしますと、キャンセル料を支払う必要がある可能性が高いと考えます」

小川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

小川 弘恵
小川 弘恵(おがわ ひろえ)弁護士 弁護士法人みお綜合法律事務所
学生の頃より「旅行が好き」「人の喜ぶ顔を見るのが好き」という理由で、旅行会社に就職したが、困っている人の役に立ちたいと一念発起し、弁護士に。いつでも気軽に相談できる「親しみやすさ」と「頼りがい」を兼ね備えた弁護士であることをモットーに、離婚・相続・企業法務などの事件を多く取り扱っている。

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