
「心が救われなければ解決とは言えない」依頼者の気持ちに寄り添い、交通事故・離婚・相続問題に注力
自分のためではなく、困っている人のために働きたい
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
困っている人のために働きたいと思ったのが、一番の理由です。もともと自分のためにがんばるのが苦手で、人のためなら努力できる性格でした。誰かのために必死になれる仕事をすることが、自分にとって充実した人生だと考えたんです。
両親が法曹なので、法律に関わる仕事は昔から興味がありました。
とはいえ、法学部に進学してからも大学1〜2年生はまったく勉強をしませんでした(笑)。司法試験の勉強は3年生からはじめたのですが、それまでは大学にも行かずアルバイトばかり。サークル活動もしていなかったので、遊び仲間もアルバイト先の人たちでしたね。
司法試験に挑戦しようと考えた理由も、はじめは法律に係わる仕事への興味と人のために働く仕事だからというくらいの意識でした。
当時はロースクールがなく、司法試験の合格率が3%前後という時代でしたから、すぐには合格できませんでした。2度目の不合格を経験した後で、渋谷駅の階段掃除をしている人を見て、ふと「これも人のための仕事だよな。そもそも仕事って何でも人のためになっているよな、なのになぜ自分は法曹を目指すのか、自分が本当にやりたい事はなんだろう?」と考えたんです。
私自身、小さい頃色々できないことが多く、良く人に助けてもらっており、助けてもらえるありがたさや苦難に直面した時のつらさを知っていました。そのような経験をしている私ならば、困っている人の気持ちに寄り添える弁護士になれるのではないかと思いました。そのときはじめて、本気で弁護士を目指すことを決意できたのではないかと思います。
――注力している分野と、注力している理由についてお聞かせください。
交通事故、離婚、相続に注力しています。以前勤めていた事務所では、企業や団体の事件を担当することが多かったのですが、もっと個人に寄り添った仕事がしたいと思い、独立して今の事務所を立ち上げました。
交通事故に注力しているのは、私自身が小学生の時に交通事故にあってつらい思いをした経験があるからです。離婚や相続もそうですが、関係者の感情が絡み合う事が多く、依頼者の気持ちに寄り添いたいと思ったことが注力している理由です。
――依頼者の方と接するときに心掛けていることを教えてください。
他人からしたら小さな事でも、依頼者にとっては大きな問題という事がありますので、依頼者の気持ちに共感するようにしています。
ただし、正しい情報を伝えるのが専門家の役目ですから、「依頼者の言うがまま」ではなく、共感した上で、依頼者の気持ちに限りなく寄り添った解決策を考えるのが大事だと思っています。
――先生の事務所では、複数の弁護士によるチーム体制で対応するそうですね。
弁護士それぞれに得意分野がありますし、考え方もいろいろです。一人で考えるよりも、複数人で知恵を絞った方がいい解決策が出ますし、それぞれの得意分野を活かしつつ、苦手な分野はフォローし合うことで、幅広く質の高いサービスを提供できると考えています。
判決よりも大切な「解決するべきもの」
――弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
ひき逃げ事件の被害者と加害者を会わせる機会を設けたときのことです。
ひき逃げ事件の加害者は当時無免許の少年で、被害者の女性は事故で重い後遺症が残りました。私は被害の賠償を得るために被害者側の代理人をしていたのですが、あるとき被害者の女性と少年を直接会わせる場を設けたのです。
被害者の女性は最初は処罰感情が強く、「絶対に許せない」と話していました。しかし裁判などが進むにつれて心境の変化があったのか、少年と会ってみたいと希望するようになりました。少年の側からも、直接会って謝罪したいという意向がありました。
「反省していなかったらどうしよう」と、被害者の女性は不安を口にしていましたが、面会の部屋に入ってきた少年は更生していて、少年審判の時とは別人のようでした。
謝罪する少年に対して、被害者の女性は「これからがんばりなさい」と声をかけていました。
印象的だったのは、面会後の被害者の女性の表情がとても晴れやかだった事です。事故にあってから苦労されてきたけれど、ようやく前を向いて進めるんだと思いました。事故を起こした少年もまた、被害者に向き合ったことで、その先の人生が変わったのではないでしょうか。
裁判に勝っても、人の気持ちが救われなければ意味がないんです。その方法の一つとして被害者と加害者が直接対話するというやり方があると学びました。
――休日はどのように過ごしていますか?
子どもと遊んでいることが多いですね。小学生の男の子なんですけど、一緒にサッカーや野球、ゴルフなどをしています。離婚事件や少年事件でさまざまな家族を見てきた経験から、子どもが正しく成長するには、親子関係が大事だと思っています。
私の場合、平日は子どもと顔を合わせる事ができないので、休日はできるだけ子どもと交流するように決めているんです。ゴルフは私が好きなので、子どもを付き合わせてるところもありますが(笑)。
――今後の展望についてお聞かせください。
世の中にはまだまだ理不尽な問題が残っています。例えば、交通事故被害者の救済が不十分である点や離婚問題における養育費の少なさなどです。そういった問題を解決するには、目の前の事件を一つ一つ解決することも大事ですが、社会全体に影響を与えるような解決策を示すことが必要だと考えています。時には裁判官と衝突することがあるかもしれませんが、恐れることなく、問題解決に取り組んでいきたいと思っています。また、企業や団体の利益を守ることで、より多くの人のためになることにも取り組んでいきたいと思っています。
――法律トラブルを抱えていて、悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
問題が起きてから相談するのではなく、問題が起きそうだと思ったら、その時点で相談するべきだと思います。自分にはどんな権利があって、その権利を守るには何をすればいいかを知ることが大事ですから、悩まれる前にまずは相談してください。
弁護士を選ぶ際は、気持ちを理解してくれた上で、専門家の視点で一緒に考えてくれる先生を選ばれた方が良いと思います。そのためにも、事態が深刻化する前に、早めに相談することが大切です。