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デジタルアーカイブで欧米に後れ 法制度化目指し弁護士らが骨子案を公表
デジタルアーカイブ学会の意見交換会では、「デジタルアーカイブ整備推進法(仮称)骨子案」の実現に向けて議論された。

デジタルアーカイブで欧米に後れ 法制度化目指し弁護士らが骨子案を公表

文化遺産や知的財産をデジタル化し、データベース化するデジタルアーカイブ。欧米では、EU圏内の美術館や博物館、図書館、研究機関などのデジタルアーカイブを検索できる電子図書館「ヨーロピアナ」や、アメリカ国内の文化機関がそれぞれ有するデジタルアーカイブを集約する 「米国デジタル公共図書館」(DPLA)といった取り組みが知られているが、日本はいまだ整備が進んでいない。

そこで、日本でも全国的なデジタルアーカイブの整備推進を進めようと、超党派のデジタル文化資産推進議員連盟が「デジタルアーカイブ整備推進法(仮称)」の検討を進めてきた。その検討に協力したデジタルアーカイブ学会(長尾真会長)の法制度部会が東京大学本郷キャンパス(東京都文京区)で9月18日、推進法の骨子案についての意見交換会を開催。意見交換会では、法制度化の実現を目指し、課題などが話し合われた。

●現場は慢性的に予算や人材が不足…課題解消のためには?

まず、法制度部会長を務める福井健策弁護士がこれまでの経緯を説明した。国内では、2009年に127億円の予算によって国立国会図書館のデジタル化事業が進んだ。以後、2017年には学識者らで構成するデジタルアーカイブ学会や、デジタルコンテンツの流通に関わる企業などで構成するデジタルアーカイブ推進コンソーシアム(DAPCON)などが発足、デジタルアーカイブ整備に向けた活発な議論が行われている。同時に、政府は2019年1月から国立国会図書館や国立美術館、国立公文書館などのデータベースを統合し、検索できるようにするポータル「ジャパンサーチ」の試験稼働を予定している。

「ところが、現場は慢性的に予算や人材が不足している」と福井弁護士は指摘。また、デジタルアーカイブをウェブで公開しようとすると、所有権などさまざまな権利の壁があり、利活用のためにこれらの課題を解決しなければならないとした。

そうした関係者が直面する困難を軽減するため、法制度部会を中心に作成したのが、今回公表された骨子案だ。藤森純弁護士の解説によると、骨子案ではデジタルアーカイブの「定義」や「基本理念」、「政府による振興基本計画の策定」「産官学民によるでデジタルアーカイブ推進会議の設置」などを明記。「定義」では、デジタルアーカイブを「歴史上、芸術上、学術上、鑑賞上または産業上価値のあるもの」とし、広い範囲を対象とした。また、デジタル環境の変化の速度から「振興基本計画」も策定するだけでなく、3年ごとに見直すことを求めている。

このほか、大きな特徴としては、国や地方公共団体の責務を明記しただけでなく、事業者の責務にも触れた。意見交換会では、永続的な運営が求められるデジタルアーカイブに対し、事業者の責務がどこまで実効性のあるものになるかなどが議論された。

この骨子案は、今年5月に開催された超党派のデジタル文化資産推進議員連盟総会で提示されたという。今後も意見交換をしながら、骨子案をベースに法制度化を目指す。

(弁護士ドットコムニュース)

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