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馬に乗って優雅に通勤したい! 道交法では自転車と同じ「軽車両」、実際の注意点は?
画像はイメージです(NAX / PIXTA)

馬に乗って優雅に通勤したい! 道交法では自転車と同じ「軽車両」、実際の注意点は?

海外では、通勤や通学に馬を使う人たちがいます。ネット上では、優雅に馬で通勤する人たちの動画をみて、馬通勤に憧れを抱く声も。

この馬通勤、日本でもできるんです。会社の規則で禁止されていなければ、明日から車や電車はやめて、馬で出社できます。馬出勤する場合は公道を走ることになるので、多くの人たちに馬乗りサラリーマンとして注目されることでしょう。

ただし、馬通勤する場合は道路交通法をはじめとする法律を守らなければなりません。なぜなら、馬は道路交通法上、「軽車両」となるためです。今回、馬車ではなく、騎乗するスタイルの法律問題について、考えてみましょう(馬車については、道路運送車両法の問題も出てきます)。

道路交通法2条1項11号には「自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう」と書かれていまして、「牛馬」とは、文字通り牛と馬を指していて、牛や馬がリヤカーなどを引いていなくても、牛馬単体で軽車両に該当します。

では、馬通勤をするにあたって注意しなければならないのは、どのようなことでしょうか。(監修:阿部 泰典弁護士

●「飲酒乗馬」「違法駐馬」は禁止、「傘さし乗馬」も違反になる可能性あり

馬は「軽車両」なので、ほかの「軽車両」と同様に道路交通法を守る必要があります。標識の確認もしなければなりませんし、信号無視も禁止です。信号無視をした場合、警察車両に追いかけられることになります。また、同じ軽車両である自転車などと同様に、歩道と車道の区分がある場合には、車道を通行するのが原則です。もちろん、飲酒して馬に乗る飲酒乗馬も禁止となるので、やめましょう。

道路標識などで最高速度が指定されている場合、標識に従いましょう。指定速度を超えた場合は道路交通法違反となるので、注意が必要です。馬が突然暴走したということは言い訳にはなりません。標識などによる速度制限がない場合は、軽車両については法定最高速度の指定がないため、どんなに早く走っても問題ありません。もっとも、無謀な走らせ方をすれば、安全運転義務(道路交通法70条)違反になる可能性はあります。

では、駐車禁止の場所に馬を止めた場合はどうなるのでしょうか。犬などであれば、駐車禁止の場所で待たせていたとしても、特に問題はありません。ということは、馬も大丈夫だと思いたいところですが…やはり「軽車両」であるからには「違法駐馬」となります。「違法駐馬」をした場合は、撤去されるおそれもあるでしょう。

なお、自転車の傘さし運転は各自治体の道路交通規則が禁止していますが、馬に対する禁止規定は見当たりません。ただし、傘をさしながら馬に乗る傘さし乗馬については、状況によっては安全運転義務(道路交通法70条)に違反する可能性があります。雨の日はレインコートを着用し、傘さし乗馬は控えましょう。

●ガソリン漏れはOK、糞漏れはNGとなる場合も

馬通勤の良いところは、排気ガスを出さないこと。おかげで、環境に優しい交通手段であるといえます。一方で、馬は糞を出す動物であることを忘れてはなりません。

車のガソリン漏れを罰する法律はありません。ならば、糞漏れも罰せられないと思いたいところですが、残念ながらガソリンと馬糞はちがいます。たしかに、道路交通法に糞漏れを罰する規定はありませんが、糞を漏らした場所、漏らした糞の量や状態、道交法を守りながら清掃できる状況か否か等によっては、漏れた糞の放置をすると各地方自治体が定める迷惑防止条例違反となるおそれがあります。馬が糞を落としてしまった場合は、飼い主として処理するようにしましょう。

●免許はないけれど、事故には要注意

馬に乗るために免許はいりません。これは自転車と同じです。そのため、無免許でも馬にさえ乗れれば、すぐにでも馬通勤を始められるのです。

ただし、馬が歩行者に怪我を負わせた場合で歩行者に過失が無い場合などは、保険に入っていないと飼い主が賠償金を全額支払うことになります。自転車とちがい、馬は生きています。どんなに気をつけていても、だれかを蹴飛ばしたりするおそれも…。実際に騎乗する際には、事故が起きた場合のことも想定しておいた方がいいでしょう。

※本文中の保険に関する部分の説明などを修正しました(8月15日18:30)

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

阿部 泰典
阿部 泰典(あべ やすのり)弁護士 横浜パーク法律事務所
平成7年4月 弁護士登録。平成14年4月 横浜パーク法律事務所開設。平成21年度 横浜弁護士会副会長。平成24年、25年度 横浜弁護士会法律相談センター運営委員会委員長、横浜弁護士会野球部監督

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