特定の国家による価値の保証がない「仮想通貨」を巡り、大きな事件が起きました。
2018年1月26日に、仮想通貨の取引所を運営するベンチャー企業「コインチェック」(本社:東京都渋谷区)において、不正なアクセスがあり、仮想通貨の1種である「NEM(ネム)」について、約580億円相当(流出時のレート換算)が外部に不正送金されました。被害者は約26万人とされています。
問題の原因として報じられているのは、コインチェック社の仮想通貨の管理方法です。仮想通貨については、大きく分けて管理方法が2つあるとされています。1つは外部のネットワークから遮断して管理する「コールドウォレット」、もう1つは外部のネットワークとつないだ状態で管理する「ホットウォレット」です。今回、不正送金が起きた「NEM」は、「ホットウォレット」による管理で、ネットワークとつながっていたため、不正アクセスを許し、流出につながりました。
コインチェック社も加入する業界団体「日本ブロックチェーン協会」には、外部から遮断された管理方法の整備を含めた自主規制基準がありましたが、コインチェック社の対応が間に合っておらず、今回の事態にいたった可能性が高いといえます。金融庁は、1月29日付で、コインチェック社に対して、資金決済法に基づく業務改善命令を出しました。
業界団体では、会員に対して、管理上の対策やサイバー攻撃に備えるセキュリティ対策を求めることに加え、より厳格な自主規制を制定していく流れになっています。ただ、日本においては、現状、管理やセキュリティ対策について、法的な規制はない状況です。
今回、弁護士ドットコムに登録されている弁護士に、仮想通貨の管理方法やセキュリティ対策における法規制の必要性について意見を聞きました。
●13人全員が「法規制必要」
以下の2つの選択肢から回答を求めたところ、13人の弁護士から回答が寄せられました。
(1)必要と考える→13票
(2)不要と考える→0票
回答数は少ないながらも、全員が「法規制は必要」との見解でした。
弁護士からは、「技術の発展を促すという観点からの規制を設けることには賛成」「仮想通貨がマネーロンダリングなどに悪用されることを防ぐための規制に加え、詐欺商法などの犯罪をしっかり取り締まることなどによる消費者保護と、技術革新への対応との均衡をうまくとることが必要」との意見があった。
現状、金融庁が一定の監督権限を持つことを踏まえて、「法律による追加の規制ではなく、金融庁の監督の充実化により対応するべきである」との声もあった。
回答の自由記述欄で意見を表明した弁護士4人のコメント(全文)を以下で紹介します。
●編集後記
仮想通貨は、安全性を含めて、十分な議論がなされているとは言えません。一方で、技術革新は、かつてないスピードで進んでいて、経済活性化の側面から、仮想通貨に期待する声も根強いといえます。
将来的に仮想通貨がどのように扱われるのか見通すことは難しい状況ですが、法整備を含めた議論が深まっていくことに期待したいと思います。