
「マイナスをいかにゼロに戻せるか」傷ついた依頼者に寄り添い、事件解決まで伴走
依頼者自身が意思決定できるようサポート
ーー弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。
警察官である父の影響で、子どもの頃から、自分も人を助ける仕事をしたいと思っていました。弁護士を志したのは、大学の法学部に進学してからです。
ーー注力分野とその分野に注力している理由を教えてください。
刑事事件に注力しています。加害者側からも被害者側からも依頼を受けますが、力を入れているのは犯罪被害者支援です。突然犯罪の被害に遭った方の権利を、法律によって守りたいという思いから取り組んでいます。
具体的には、刑事裁判への被害者参加や加害者への損害賠償請求をはじめ、事件発生後にマスコミが大きく報道するような事件では、被害者に代わって記者に対応したり、「今は静かにしておいてほしい」と、一旦引いてもらうために交渉したりすることもあります。
警察庁の統計によると、千葉県は刑法犯の認知件数で常に全国トップ5に入っています。特に性犯罪が多く、その被害者の支援もおこなっています。最近は、SNSで知り合った相手から性犯罪の被害に遭ったという事案や、教師から生徒に対する学校内でのわいせつ事案が多いです。
刑事事件以外では、家事事件や借金問題の相談も受けています。
ーー仕事をするときに心がけていることは何ですか?
依頼者が自分の意思で判断できるようにサポートすることです。「こちらの方がいいですよ」と誘導するような言い方をしないように心がけています。
たとえば裁判で、このまま判決に進むのか、それとも和解をするのか選択する場合、弁護士としてはつい、「和解した方がいいですよ」と勧めたくなります。でも、依頼者のニーズに合う選択をしてもらうことが大事だと思っているので、私からはそれぞれの選択をした場合のメリット・デメリットをきちんと説明し、そこから先の決断は必ず依頼者本人に下してもらうようにしています。
ーー先生の弁護士としての強みは何ですか?
弁護士というと、「優秀な成績をおさめてきたエリート」というイメージを持っている人も多いと思いますが、私自身はそういうタイプではありません。だからこそ、心が弱っている人や社会から取り残されているような人の気持ちに寄り添えるのではないかと思っています。それが強みと言えるかもしれません。
ーー弁護士として活動してきた中で印象的だったエピソードを教えてください。
人によって考え方は違うと思いますが、私としては、弁護士の仕事はマイナスをゼロに戻すことだと思っています。プラスではなく、いかにゼロまで持っていけるかを追求する仕事なのだと。
ある殺人事件に被害者参加弁護士として携わり、求刑越えの判決を獲得できたことがあります。しかし、だからといって被害者の悲しみが消えるわけではありません。
弁護士からするといい成果を出せたと思えても、被害者にとってはマイナスの状態がゼロに戻っただけ。むしろゼロまで戻ればいいほうだと思っています。この事件に限らず、弁護士としての「成果が出たな」という感覚と、依頼者の思いとの間には、差があることをいつも感じています。
悩みを話すだけでも頭の整理ができる
ーー今後の展望を教えてください。
引き続き、犯罪被害者支援に力を入れたいです。事件に遭ってしまった方の支援はもちろんしていきますが、それ以前に、犯罪被害を防ぐための仕組みづくりや、被害者をきちんとサポートするための制度を整える必要もあると思います。
自治体によって、犯罪被害者支援の条例があるところとないところがあり、内容もそれぞれ異なります。千葉県には条例があるのですが、内容が充実しているとは言えません。現在、条例を整備するための活動をしているので、引き続き取り組んでいきたいです。
ーー法律トラブルを抱えて悩んでいる方へのメッセージをお願いします。
悩んでいる最中は、自分の思考も視野も狭くなり、状況を打開するための選択肢が思いつかない状態に陥ると思います。そういうときこそ、弁護士に相談してください。人に話をするだけでも頭の整理ができますし、弁護士は専門家だからこそ、「解決のためにはこういう選択肢もありますよ」とアドバイスできます。
悩んでいるときに、誰かに話を聞いてもらうことはとても重要です。相談相手の1人として弁護士を活用してもらえればと思います。