吉本興業所属の芸人による闇営業問題で、テレビ業界などに影響が及んでいる。
そこで懸念されるのが、違約金だ。雨上がり決死隊の宮迫博之さん、ロンドンブーツ1号2号の田村亮さんら人気芸人も特殊詐欺グループの忘年会に参加したとして、無期限謹慎処分となっており、違約金が発生するとすれば、高額になる可能性もある。
しかし、芸人たちは、吉本興業と契約書を交わしていないという情報もあり、特殊な状況もあるようだ。違約金が発生した場合、それを支払うのは吉本興業なのか。あるいは芸人本人になるのだろうか。エンターテインメント問題に詳しい河西邦剛弁護士に聞いた。
●通常は「事務所が支払い、その後に芸人に請求する」
ーー有名人、タレントの不祥事では必ず「違約金」の問題が取り沙汰されます。今回も、違約金は発生すると考えられるでしょうか
今後、スポンサーが降板した場合、テレビ局に対して違約金や損害賠償の支払義務が発生することは十分あり得ます。
ーー億単位の違約金との報道も出ていますが、人気芸人とはいえ個人で払える額とは思えません
タレント個人に数千万円から億単位の損害賠償をすぐに支払える資力なんて通常ありません。そのため不祥事が起こった場合、まず芸能事務所がテレビ局に対して違約金を支払います。その後、芸能事務所がタレントに対して請求していくという流れになります。
●契約書がなければ、芸人に請求できない可能性も
ーー違約金の支払いについて、契約書でも触れられているのでしょうか
芸能事務所とタレントは、ほとんどのケースで契約書を交わしています。そして契約書には、タレントの禁止条項が明記されています。
禁止条項は薬物の禁止から始まり、暴力団を始めとする反社会勢力と関係をもたないことや、タレントが事務所を通さないで出演料を受け取る、いわゆる闇営業の禁止(専属条項)が入っています。
また、これらの禁止行為に違反し、実際に損害が生じた場合にはタレント本人が賠償する内容が明記されています。
ーーしかし、吉本興業には芸人との契約書がないといわれています
仮にそれが事実だとすれば、吉本興業が芸人個人に請求しようとしても、請求の根拠となる直接的な契約書がないということになります。
さらに吉本興業が芸人個人に対して訴訟を提起した場合、裁判所は契約書がない以上、なにを根拠に請求を判断するのかにまず頭を悩ませるでしょうし、最終的に請求が棄却される可能性すらあります。
また、裁判所が吉本興業の損害賠償請求を認めるとしても、契約書がないことから、損害の範囲が狭く解釈され金額も低くなる可能性も十分あり得るところでしょう。
ーー吉本興業に対してではなく、芸人本人に直接、請求する可能性はないのでしょうか
テレビ局が芸人本人に直接請求することは法律的に不可能ではありません。
ただ、契約書はないものの吉本興業に所属していた事実はあるわけですし、テレビ局からの今までの出演料は芸人本人ではなく吉本興業にすべて支払われています。そうすると、業界ルールとしても、芸能事務所である吉本興業を通さずに芸人本人に直接請求することは考えにくいですね。