振り込め詐欺グループなど「反社会的勢力」に関わりをもったなどとして、お笑いコンビ「カラテカ」の入江慎也さんが6月4日、所属事務所の吉本興業から契約を解除された。
6月7日発売の写真週刊誌「フライデー」によると、宮迫博之さんや田村亮さんなど吉本興業の人気芸人たちが2014年12月、都内のホテルでおこなわれた振り込め詐欺グループの忘年会に参加した。入江さんが仲介役で、事務所を通さない「闇営業」だったという。
入江さんは6月7日、ツイッター上に「世間をお騒がせし、御迷惑をおかけすることとなり、大変申し訳ございません」と謝罪コメントを掲載。忘年会に出席したことは事実としながらも「詐欺グループの忘年会であるとは本当に知りませんでした」とつづっている。
●吉本興業と芸人との間に契約書は存在しない
この騒動をめぐって、同じく吉本興業所属のお笑いコンビ「ハリセンボン」の近藤春菜さんが6月7日、日本テレビの情報番組「スッキリ」で、「吉本興業と芸人との間に、契約書というものがないんで」と指摘した。
司会をつとめる加藤浩次さんが「俺らは交わしたことがない」と応じたところ、近藤さんは次のように続けた。
「芸人は特に交わしたことがないので、契約解消というのであれば、会社としても契約書をちゃんと作って、『これこれこういう契約でやるので、なにかお話がかかった際にはちゃんと会社は通しましょうね』とか。契約交わすときに何もなかったのでわからない部分もたくさんあるんです」
そもそも契約書がないのに、契約解除することは可能なのか。芸能問題にくわしい河西邦剛弁護士に聞いた。
●契約書がなくても「契約」は成立するが…トラブルの元に
「契約書がなかったとしても、契約解除は可能です。これは、芸能人と事務所との間でも同じです。
契約は、書面がなかったとしても、口約束や行動によっても成立します。入江さんが吉本興業所属のタレントとして活動していた事実は明らかですから、契約書がなくても吉本興行との契約はあるといえます。
ただし、契約書がないと『契約内容』が不明確になり、『どういう場合に契約解除できるのか』があいまいになります。契約書には、後のトラブルを防止するという機能がありますので、契約書がないとトラブルに発展しやすいということはあるでしょう」
今回の契約解除を法的にどう判断するか。
「まず、世の中の事務所と芸能人との間でむすばれるほぼすべての契約書に『専属条項』という『タレントは所属事務所を通さずに芸能活動により報酬を得てはいけない』という条項があります。
また同時に、専属という概念は芸能界では当然の前提になっているといえるでしょう。そうすると、仮に、入江さんが事務所を通さずに、出演料を得たり、それを繰り返していたりとするならば、この専属条項に違反しているので、契約解除されることになります」
●反社会的勢力は「ゆすり」「たかり」が得意
今回のようなケースを防ぐためには、タレントや芸能事務所はどういうことに気をつけるべきか。
「反社勢力が得意とするやり方が、『ゆすり』や『たかり』です。反社勢力と一緒にいるところの写真や動画を撮られて、後日、無理難題を押し付けられるとともに『受け入れられないなら写真を週刊誌に流す』とくるわけです。
反社勢力との交際が報道されると、有名タレントであれば、CMの降板をはじめ、たった1枚の写真で、億単位の損害が発生します。なので、所属事務所としては、反社勢力との断絶について、日ごろからタレントに周知徹底する必要があります。
反社勢力はあの手この手でタレントの弱みを握り、それをネタにゆすりたかりを永遠に続けてきます。タレントの場合は特に『ちょっと食事をするだけ』が後々取り返しのつかないことになるという認識が重要だと思います」