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社会保障を求めると「特権」に見えてしまう…「貧困バッシング」背景にある社会の変化
エキタスの栗原耕平さん

社会保障を求めると「特権」に見えてしまう…「貧困バッシング」背景にある社会の変化

最低賃金引上げなどを求める団体が11月11日、「貧困バッシングを考える院内集会」を東京・永田町の参議院議員会館で開いた。社会保障に詳しい大学教授や貧困問題に取り組むNPO法人の代表らが、日本における貧困の現状と解決に向けた提言を語った。

主催は最低賃金を1500円に引き上げることなどを求めて活動する若者グループ「AEQUITAS(エキタス)」。

「貧困バッシング」をめぐっては今年8月、子どもの貧困を取り上げたNHKのニュース番組に登場した女子高生が、アイドルのライブに行ったり、1000円以上のランチを食べたとツイートしていることなどを指摘され、ネット上で「この女子高生は貧困ではない」と中傷を受けたことが話題になった。

エキタスのメンバーで大学3年生の栗原耕平さん(21)は、貧困バッシングや生活保護バッシングの背景には、「必死で働いても人並みの生活が送れない労働者の増加」があると指摘。「こうした社会状況の中では、生活保護を受けたり、自らの貧困を訴えている人が『特権者』のように見えてしまうのではないか。『私たちがこんなに頑張ってもこれだけの生活しかできないのに、なぜ彼らは社会や政治を頼りにするのか』という憤りがバッシングの背景にあると思う」と述べた。

貧困には、住む場所がない、収入が全くないといった「絶対的貧困」と、その日の生活にも困るほどの貧困状態ではないが、その社会での標準的な生活ができず、進学などの面で不利益を被る「相対的貧困」とがある。

高齢者の貧困問題に迫った「下流老人」などのベストセラーで知られる、NPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典さんは、「相対的貧困は見えにくいという特徴がある」と指摘した。ほっとプラスでは全国の生活困窮者から年間約500件の相談を受けるが、「アクセサリーをつけていたり、ぴしっとスーツを着て相談に来る人もいる。当然、スマートフォンも持っている。ともすると一見して貧困と感じられない人も来ていて、本人の苦しさに気づきにくい」。

住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人の稲葉剛さんは、「『可哀想な人は救済してもいい』という論法は、裏を返せば『可哀想に見えない人は救済しなくてもいい』ということ。可哀想に見えようが見えまいが、困っている人全てに権利として社会保障を給付することが必要。権利としての社会保障という意識を確立していきたい」と述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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