営業の件数を上げることができず、ウソの報告書を提出したことが会社にバレそうーー。営業マンのそんな告白が、ネットの掲示板に投稿された。
投稿者は「適当な会社をでっちあげて」、大口の受注があったかのような報告書を作成した。数日たったら、キャンセルになったということにしようと考えていた。ところが、その報告書が会社の上層部の目に止まった。投稿者はべた褒めされ「君が入社してきて良かった」とまで言われた。
大事になってしまったため、キャンセル扱いで報告書を取り下げることもできない一方、調べられたらウソだということは簡単にバレるため、困り果てているという。
投稿者が所属する営業部ではよく使われている手法だそうで、投稿者も「確かに嘘だけど詐欺ではない」と弁解している。ウソの報告書を会社に提出することは、法的にはどんな問題があるのか。原英彰弁護士に聞いた。
●「懲戒処分を受ける可能性が高い」
「就業規則の内容によりますが、懲戒処分の対象となる可能性は極めて高いでしょう。
懲戒処分は、企業秩序違反に対する制裁ですが、通常、虚偽の報告といった行為は、企業秩序に違反する行為として懲戒処分の対象となります。
ただし、懲戒処分は、就業規則上の根拠が必要ですので、該当条文がなかったり、そもそも就業規則がなかったりすると、懲戒処分は出来ません」
原弁護士はこのように述べる。就業規則で定められていた場合、処分の重さはどの程度になると予想されるのか。
「『営業部ではよく使われている手法』とのことなので、ほかにも類似の事案があることが推察されます。
懲戒処分は、類似事案との処罰の均衡が求められるため、本件に限って、懲戒解雇などの重い処分を下すことは難しいかと考えられます」
企業から損害賠償を求められる可能性はあるのか。
「会社の損害発生の有無、その損害とウソの報告書を提出したことの間に因果関係の有無によっては損害賠償を求められる可能性はあります。
報告書を取り下げれば、企業側は企業としての損害は生じないと思われますが、取り下げずに、社内でウソの報告書にしたがって手続きが進めば、企業に損害が生じる可能性があるでしょう。
なお、本件では、金銭等を詐取したわけではありませんので、詐欺等の刑法犯には該当しないと考えられます」