人身取引被害について考えるイベントが7月2日、東京都内で開かれ、フィリピンで人身取引の被害に遭い、現在は同国のNGOで働くマーリーン・カピオ・リヒターさんが自身の被害体験を語った。
このイベントは、性的搾取の被害者を支援するNPO法人ライトハウスと、途上国の児童労働をなくすために活動するNPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパンが開催した。
●警察に金を渡して釈放されるケースも
マーリーンさんは母親の再婚相手である義父から度重なる性的虐待を受け、12歳で家を飛び出して路上で生活を始めた。職も金もないまま1人で途方にくれていた時、ある女性から、「私が助けてあげる。教育も受けられるし、ご飯も食べられるよ」と声をかけられたという。
「このチャンスをつかもう」とマーリーンさんがついて行ったその女性は、実は性産業のブローカーだった。売春を行う店に売り飛ばされたマーリーンさんは、フィリピンのリゾート地で、外国人観光客を相手に売春をさせられた。「1日10人くらいを相手にすることもあった。客の中には日本人もいた」という。
その後、マーリーンさんは15歳の時に警察に保護され、フィリピンのNGO「プレダ基金」の支援を受けながら、自身を買春した2人のドイツ人を訴えて勝訴した。大学ではソーシャルワーカーの資格を取得し、現在はプレダ基金で、ソーシャルワーカー兼弁護士の補佐スタッフとして、児童買春や性的虐待の被害者支援を行っている。
マーリーンさんによると、フィリピンでは警察に対する賄賂がはびこっており、買春をして逮捕されても、警察に金を渡すことで釈放されるケースが少なくないのだという。マーリーンさんは、「加害者が外国人の場合、釈放されて本国に逃げ帰ってしまうこともある。フィリピンは軽い気持ちで買春できる国ではないことを示すために、加害者を罪に問えるまで徹底的に闘いたい」と話した。
さらにマーリーンさんは、日本におけるアダルトビデオの出演強要問題にも触れ、「人身売買はフィリピンだけではなく日本でも起きている。出演者が脅されてアダルトビデオや児童ポルノができているとまず知ることが重要。皆さんと一緒にこの問題を変えていきたい」と述べた。