ゴールデンウィークが終わると、落ち込んだりやる気が出なかったりする「五月病」になる人も増えてきます。仕事に行くのも嫌になり、突然「バックレ退職」した場合、法的にはどう考えられるのでしょうか。
弁護士ドットコムにも、仕事を「バックレたい」という相談が寄せられています。
相談者の女性は、雇用契約書や雇用条件通知書、雇用保険、有給休暇がない個人経営の職場に勤めています。会社は労働基準法を守らないだけでなく、パワハラも蔓延しているため、女性は「バックレたい気持ちで一杯」とこぼしています。
突然、会社を辞めた場合、何かリスクはあるのでしょうか。寺岡幸吉弁護士に聞きました。
●退職は「2週間以上前」に伝えておく
——会社をいますぐ辞める方法はありますか?
退職の通知は、2週間以上前にすることが原則です(民法627条1項)。もう少し詳しく言えば、雇用期間の定めがない場合は、労働者からの退職の意思表示は2週間前にすれば適法です。
——では「バックレ退職」は違法ですか?
この2週間より前の日を指定して退職の意思表示をした場合には、理論的には損害賠償を受ける可能性はゼロではありません。
たとえば、自分1人が担当して準備をしていて、明日契約しなければ損害が生じることが明らかな契約があるのに、その準備をせずに契約前日に退職して、結果として破談となった場合などが考えられます。ただし、実際上はそのような場合は希だと思われます。
——相談者の会社は雇用保険も有給休暇もないそうです。このようなひどい会社であっても「バックレ退職」はダメですか。
個人経営の会社であっても、ごく稀な例外を除いて、雇用保険も有給休暇も、使用者には義務があります。そのほかにも、パワハラをしないという義務が使用者にはあります。
これらを考え合わせると、債務不履行で雇用契約を解除するという方法も考えられます。
ただ、この解除は、期間を定めて催告して、その期間内に守られない場合にできるのが原則です(民法541条)。例外として、期間を定めて催告しても意味がないような場合(使用者が頑なに拒む場合など)には即日解除(退職)が可能です。
●最低限何をすればいい?
——今すぐ会社を退職したい時、最低限どのようなことをすれば良いですか。
自分で直接2週間以上前に伝えるか、交渉上手な弁護士に依頼することでしょう。いわゆる退職代行業者は弁護士法72条違反のおそれもありますし、使用者が感情を害して即日退職を受け入れようとしない可能性があるので、使わないほうが良いでしょう。
なお、ここでいう「交渉上手」とは、使用者を怒らせないで説得できるか、怒らせても「対抗手段はない」あるいは「とれない」とあきらめさせることができるという意味です。
次に、文書でも構わないので、最低限の仕事の引き継ぎはしましょう。指示された仕事の進捗状況は伝えておくべきだと考えます。
——どうやって弁護士を選べば良いのですか?
一般的に弁護士を選ぶ場合の心構えですが、自分の疑問にしっかりと答えてくれるか、こちらの話をまともに聞いていないのに着手金の話を始めたりしないか、感覚的なものでいいので、あなたにとって印象が良かったか、などで判断すべきです。