客や利用者からの理不尽な要求や暴言、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)。
10月1日から企業にカスハラ対策が義務付けられたことを受け、弁護士ドットコムニュースが読者に体験談を募ったところ、店舗だけでなく、介護施設や裁判所、学校、大学など、さまざまな現場で働く人たちから切実な声が寄せられた。
なかでも目立ったのが、介護現場からの訴えだ。利用者から暴力を受けても周囲に理解されず、泣き寝入りせざるを得ないという声もあった。
●介護現場の暴力「滅多にニュースになりません」
「介護現場では、利用者から職員が暴言や暴力を受けるケースが多いですが、滅多にニュースになりません」
こう訴えるのは、兵庫県の介護施設でケアマネジャーとして働く50代女性だ。
職員による利用者への暴力は決して許されないとしたうえで、介護職員が被害を受ける実態にも目を向けてほしいという。
「一つのそうしたニュースの背景には、その100倍くらい、利用者→職員への暴言・暴力があることを、世間には広く知ってほしいです」
女性によると、利用者から繰り返し暴言を浴びせられたり、暴力を振るわれたりして、職員がとっさに自分の身を守ろうとした行動が、虐待とみなされるケースもあるという。
「その理不尽さに悔しい思いがあります」
さらに、利用者の家族からの過度な要求にも悩まされているという。
「法律上、できることとできないことがあり、人手不足で対応が困難なこともあります。『それが不満なら、ご自宅でご家族様がご自分でお世話されてください』と言いたくなる場面が頻繁にあります。
お金さえ払えば、職員を使用人のように見下して良いと勘違いされてるのでは?と思うこともあります」
●暴行されても上司は「相性が悪いだけやな」 、訪問介護は「現代の奴隷奉公」
和歌山県の介護施設で働く50代女性も、利用者からの暴力に悩まされている。
女性の利用者からも、顔を平手打ちしたり、殴る蹴るの暴力を振るったりすることがあるという。
自身が暴行を受けた際、上司に報告したところ、返ってきたのは「その利用者と相性が悪いだけやな」という言葉だった。
「介護スタッフから利用者への暴力は記事やテレビにとりだたされるが、利用者から介護スタッフに対しての暴力は記事になりません。介護スタッフは泣き寝入りしています」
関東地方の高齢者施設で働く50代女性は、利用者の家族からの要求に頭を悩ませている。
「一部のご家族がモンスターです。対人間の契約に関する仕事は、どこからどこまでが境界線なのか?と思います」
中国地方の50代女性も、介護現場の厳しい実情を訴える。
「ほとんどの利用者やその家族は、払った費用で、何でもすべて対応してもらえるという認識」「閉ざされた環境で、カスハラという訴えができない業界です」
特に過酷なのは、利用者の自宅を訪問する看護・介護職員だという。
「何をされても言われても、され放題、言われ放題」
女性は、こうした働き方を「現代の奴隷奉公」とまで表現した。
●SNSに「晒すぞ」裁判所や学校、大学でも
カスハラに悩む声は、介護現場に限らない。
関西地方の50代男性は、裁判所の職員だという。
訴訟で思い通りの判決や決定を得られなかった当事者が、窓口に長時間居座ったり、電話で延々と罵声を浴びせたりする場面を目の当たりにしてきた。
さらに職員の対応を撮影し、SNSで公開すると脅すケースもあるという。
「対応した一般職員の動画を撮り、Xやインスタにあげて晒すぞと脅してくるなど、精神疾患にかかって休職を余儀なくされた同僚が複数いる」
学校現場からも深刻な訴えがあった。
担任教員がSNSで晒され、休職に追い込まれたケースを紹介したうえで「問題にはなっているのに、教員のことは、どこもまともに取り合ってくれません」「現場は疲労困憊です」(地域・年代・性別不明)。
大学でも、学生への対応に苦慮する教員がいる。
埼玉県の60代男性は、大学の非常勤講師として授業中、無断で教室を出ようとした学生を注意したところ、後から逆ギレされたという。
「サービス業だけではありません。大学非常勤講師は立場が弱く、学生の苦情一つで契約を打ち切られる場合もあります」
被害を受けても声を上げにくく、職場に相談しても十分に対応してもらえないという訴えもあった。カスハラ対策の義務化を、現場で働く人たちを守るための実効性ある取り組みにつなげられるかが問われている。