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2018年04月18日 10時27分

日本郵政、正社員の手当廃止で論議…梅田弁護士「非正規の低処遇を改善する趣旨と真逆」と批判

日本郵政、正社員の手当廃止で論議…梅田弁護士「非正規の低処遇を改善する趣旨と真逆」と批判
画像はイメージです。(ryohei / PIXTA)

正社員と非正社員の不合理な待遇格差を禁止する「同一労働同一賃金」に注目が集まる中、日本郵政グループが、正社員にだけ支給する住居手当を廃止して、非正社員との待遇格差の是正を図ると朝日新聞(4月13日)が報じ、ネット上で大きな話題を集めた。

●正社員の手当削減、非正社員に新たに手当支給も

この報道について、日本郵政は4月16日、弁護士ドットコムニュースの取材に対し「正社員の労働条件については、時代に即して柔軟に見直しをしている」として、正社員の待遇を下げて非正社員との格差の是正を図った訳ではないと否定した。

ただ、見直しの中で、正社員に従来、支払ってきた年末勤務手当は取りやめ、寒冷地手当や遠隔地手当も削減することになったという。また、引っ越しを伴う転勤がない一般職(約2万人)の中で、住宅手当が支払われていた5千人について、段階的に手当を廃止していく。

一方で、約19万9千人いる非正社員については、1日4千円の年始手当を支給することや、病気休暇の新設や一時金の引き上げを決定した。

日本郵政グループの正社員は約22万4000人(2017年10月現在)おり、総合職、地域基幹職、一般職の3職種に分けられている。

●「待遇格差」訴訟で支払い命じる判決も

今回の決定の背景には、日本郵政グループの正社員と非正社員との間の「待遇格差」を巡って争われた裁判が影響しているとの見方もある。

子会社である日本郵便の契約社員が、正社員に支払われている各種手当が契約社員に支払われないのは労働契約法違反にあたるとして、裁判を起こしていた。

東京地裁は2017年9月、契約社員3人の訴えに対し、請求の一部である年末年始勤務手当、住居手当、夏期冬期休暇、病気休暇について待遇差が「不合理なものであると認められる」として、その内の年末年始勤務手当と住居手当の一部(6〜8割)に当たる計約92万円の支払いを命じる判決を言い渡している。

また、大阪地裁も2018年2月、契約社員8人の訴えに対し、待遇差を不合理な労働条件の相違と認定。扶養手当、住居手当、年末年始の勤務手当について、正社員と同額を認め、同社に計約300万円の賠償を命じた(東京、大阪いずれも高裁で係争中)。

●非正社員への手当支給「モチベーションアップのため」

ただ、同社は、非正社員への一部手当支給決定について「従業員のモチベーションアップのため、最大限の還元をしていく必要がある」として、今回の決定が「同一労働同一賃金」の流れを受けたものではないと話した。

「同一労働同一賃金」の導入は、政府が4月に閣議決定した働き方改革関連法案にも盛り込まれており、大企業は2020年4月、中小企業は21年4月から施行される予定だ。

日本郵便の「待遇格差」訴訟に携わった梅田 和尊弁護士は今回の決定をどうみるだろうか。

●労働契約法20条の趣旨と反する

ーー今回の日本郵政の対応について、どう見ますか。

「労働契約法20条は、正社員(無期契約労働者)と非正社員(有期契約労働者)との間で、不合理な労働条件の違いを禁止しています。

もともと労働者は使用者と比べて弱い立場にありますが、非正社員は雇止めの不安などがあって、正社員と比べてより立場が弱く、より低い処遇となっているのが日本の現状です。非正社員が全労働者の約4割を占めるに至った現在、その非正規の低処遇を放置できない、改善しなければならないとしてできた法律が労働契約法20条です。

年始勤務手当を正社員と同様に契約社員にも認めたことは評価できます。しかし、正社員の年末手当を廃止したり、一部の正社員を対象とした住居手当を廃止して契約社員と合わせたりすることは、上の労働条件を下に合わせるというもので、労働契約法20条の趣旨と真逆のことをしていることになります。

朝日新聞に対しては、会社は正社員の年末手当の廃止について『正社員の労働条件は既得権益ではない』と理由を述べています。しかし、2017年9月と2018年2月の東京、大阪両地裁での敗訴判決を受けての裁判対策としか考えられません」

ーー裁判対策というのはどういうことか。

「今後、正規労働者と非正規労働者とで待遇に相違があることは不合理だとして、損害賠償を非正規労働者に支払わなければならないからです。

しかし、正社員の手当をなくしてしまえば相違はなくなりますから、将来の損害賠償を支払う必要をなくすために、今回のような措置を取ったのではないでしょうか」

●「非正規がもらえていないのがおかしい」

ーー「元々、正社員が各種手当をもらいすぎだった」との意見もあります。

「今回廃止されたような手当が正社員に支給されてきたのには、それぞれ理由があります。例えば、年末年始勤務手当であれば、年末年始の国民の多くが休んでいるときに最繁忙期の仕事に就いているからという理由で、手当ができ、支給されるようになりました。

正社員がもらいすぎなのではなく、非正規がもらえていないのがおかしいのです」

ーー今後の影響について、どう考えますか。

「日本郵便は、もともと国の直轄事業として運営され、民営化後も日本有数の大企業です。そのような企業が、労働契約法20条の趣旨と反対の行動に出ていることが、他の企業に波及する影響の可能性は懸念せざるを得ません。

労働者の賃金を引き上げて経済の活性化を図るという政府の狙いとも逆です。これでは、人件費を切り下げる企業だけが資産を増やすことになってしまいます」

(弁護士ドットコムニュース)

梅田 和尊(うめだ・かずたか)弁護士
2004年弁護士登録、第二東京弁護士会、日本労働弁護団常任幹事。労働問題全般を取り扱う。著書に「会社で起きている事の7割は法律違反」(朝日新書・共著・2014年)など。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/labor

この記事へのコメント

役人の本性 50代 男性

梅田弁護士が言うように、本来の趣旨は低待遇の非正規の人と正規社員が同様な業務(配達などでしょうか?)をしているという主張があるため、非正規の人も正規の人の待遇に近づけろということでした。

 しかし、根本的に見誤っているのは、なぜに同じ職務を正規と非正規が混在して担当しているのかという理由です。全部を正規職員(高待遇⇒高コスト)で担当したら、会社の経営が苦しくなるから合理化・リストラをして今日至っているということです。
 会社の経営モデルに耐えるようにコストダウンする中で非正規を大量に抱えるようになったので、抜本的な収益率アップでもない限り(料金の大幅値上げとか)非正規の処遇を高めたいのなら、正規社員の処遇を下げるしか、無能な経営陣には解決策はないのです。ヤマト運輸に負けない生産性を持つしかありません。

その問題を指摘しないで賃金処遇のことだけ取り上げるのはナンセンス。

まーくん 男性 30代

御意‼️

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