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実録「結婚式トラブル」式前日から新郎が音信不通、涙の新婦「支払いだけはよろしく」
画像はイメージです(Ushico / PIXTA)

実録「結婚式トラブル」式前日から新郎が音信不通、涙の新婦「支払いだけはよろしく」

結婚式当日、夫とその親族が来なかったーー。幸せになるはずの結婚式でまさかの展開を迎えた女性から、弁護士ドットコムに相談が寄せられました。

女性は婚姻届を提出して半年後、急遽相手の両親の希望で結婚式を行うことになりました。予算やプランは2人で話し合って決めましたが、請求書が届いた途端に夫が「払えない」と言い出しました。そこでより安い「親族のみ」のプランに変更し、費用は女性が全額負担しました。

しかし、結婚式前日から夫と音信不通になり、夫とその親族は結婚式当日も現れませんでした。

この件を機に、女性は離婚を考えています。結婚式をドタキャンされた場合、式のキャンセル料を夫やその親族に請求することはできるのでしょうか。長瀬佑志弁護士に聞きました。

●夫に請求することはできるが…

結婚式のキャンセル料を夫やその親族に全額請求することはできますか。

「結婚式を直前にキャンセルされてしまった場合、本来であれば結婚式を行う予定であったわけですから、そのキャンセル料は、夫に対し不法行為に基づく損害賠償として請求できると考えられます。

一方、夫本人ではなく、夫の親族に対する損害賠償請求については、慎重に考える必要があります」

なぜでしょうか。

「あくまでも結婚式の相手は夫本人ですから、夫の親族が欠席したとしても夫本人さえ出席していれば結婚式をキャンセルする必要はなかったとも考えられます。夫の親族が積極的に夫本人と協同して結婚式をキャンセルしたといったような事情がなければ、夫の親族に対する損害賠償請求は難しいかもしれません。

なお、今回の相談の参考となる事例として、結婚式をドタキャンした女性の責任が認められた東京地判平成18年2月14日の裁判例があります。

この女性は式の3、4日前に婚約者と連絡を絶ち、他の男性宅に宿泊し、婚約者に居場所も知らせないままこの男性とともに実家に帰ってしまいました。

その後の話し合いの機会も拒絶して、自分の所有物を全部実家に搬出したということが、不法行為にあたるとして、損害賠償請求が一部認められています。この中に、結婚式のキャンセル料も含まれています」

●離婚手続きはどう進めればいい?

女性は離婚を考えています。今後、離婚手続をどのように進めればいいのでしょうか。

「離婚する方法として、(1)協議離婚、(2)調停離婚、(3)裁判離婚、の3つの方法が考えられます。相談者が夫と連絡をとることができるのであれば、まずは(1)協議離婚の方法を考えることになるでしょう」

女性は夫と連絡が取れていないようです。

「そうなると、(1)協議離婚の方法は現実的ではありません。相談者と夫の合意がなくても離婚をする方法としては(3)裁判離婚ということになりますが、裁判の前に調停をしなければなけないという調停前置主義が採用されているため、いったんは(2)離婚調停を申し立てることになります。

(2)離婚調停を申し立てても夫が調停に出席しない場合には、裁判所に調停を不成立としてもらうか、調停申し立てを取り下げて、調停手続を終了することになります。

そして、(2)離婚調停を終了した後に(3)離婚訴訟を提起し、離婚を認める旨の判決を求めることになります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

長瀬 佑志
長瀬 佑志(ながせ ゆうし)弁護士 弁護士法人長瀬総合法律事務所
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか

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