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2018年06月07日 09時10分

「ウソの誕生日」に貢がせてドロ沼 浮気相手が「この詐欺師、訴えてやる」と激怒

「ウソの誕生日」に貢がせてドロ沼 浮気相手が「この詐欺師、訴えてやる」と激怒
画像はイメージです(nonpii / PIXTA)

「浮気相手に素性がバレるのが嫌で、ウソの誕生日を伝えてしまいました」ーー。都内の会社員A子さん(30代)にとって、それが苦難の始まりでした。

「相手から『欲しいものは何?』と聞かれたので、あまり深く考えずに欲しいものを答えたんです。そしたら、後日、本当にプレゼントしてくれて…」

A子さんは、ウソをついたことや、そもそも浮気していたことへの罪悪感が湧いてきたといいます。突発的に別れを切り出し、電話やLINEなども着信拒否にしてしまいました。

「でも、相手は興信所を使って居場所を探ってきて…。今、『誕生日を偽って高価なプレゼントを買わせた』と慰謝料などを請求されているんです。道徳的には悪いことだと分かっているのですが、これって詐欺になってしまうんでしょうか」

A子さんの悩みは、法的にどう考えられるのか。溝延祐樹弁護士に聞きました。(弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた投稿をもとに、編集部が創作しました)

●「本当の誕生日」を言っていたら、プレゼントはもらえなかったのか?

ーー「ウソの誕生日」でプレゼントをもらったA子さんは詐欺罪になる?

結論から申し上げると、A子さんの言動は詐欺には当たらないと考えます。まず、刑法上の詐欺は「人を欺いて財物を交付させた」場合に成立するとされています(刑法246条)。

この「人を欺いて」に該当するためには、一般人を基準として「その点につき勘違いがなければ、その財産を贈与したり売却したりはしなかった」と言えるような重要な事がらを偽ることが必要とされます。

今回の事例に当てはめれば、「本当の誕生日を知っていれば、A子さんにプレゼントを渡すことはなかった」と言える必要があります。

ーーA子さんが主張する通りだと、それは考えづらそうです

そもそも恋人にプレゼントをするきっかけには様々なものがあるため、「本当の誕生日でなければ恋人にはプレゼントをしない」という命題自体、一般論として成立しにくいと思います。

まして、今回のケースでは、相手方はA子さんがウソの誕生日を言う前の時点で、A子さんに「欲しいものは何?」と尋ねているのですから、最初からA子さんにプレゼントをあげる固い意思があったことが分かります。

したがって、A子さんの発言は「人を欺いて」に該当しないと考えられますから、「刑法」上の詐欺罪は成立しないでしょう。

また、ここで述べた理由は「民法」上の「詐欺」の解釈(同法96条1項)にも適合するため、民法上の詐欺も成立しないと考えます。したがって、A子さんの発言は刑法上も民法上も詐欺には当たらないでしょう。

●プレゼントを返す必要はない

ーー詐欺にはならないとしても、もらったプレゼントを返す義務はないの?

返却の必要はないと考えます。今回のケースですと、A子さんと相手方との間にはプレゼントについて贈与契約(民法549条)が成立しています。

そして、民法550条は、履行が終わった部分の贈与は撤回できないものと定めているため、相手方はA子さんにプレゼントを渡した時点で贈与契約の効果を否定できなくなっています。したがって、A子さんはプレゼントを返却する必要はありません。

ーー法的には一度プレゼントを渡しちゃうと、取り返すのは難しいんですね

そうですね。一度自分の意思でプレゼントをしたのに後から自由に取り戻せるとされては受け取る側は怖くてプレゼントを受け取ることができなくなります。そのため、今回のケースでA子さんが法的責任を問われることはないと考えます。

(弁護士ドットコムニュース)

溝延 祐樹弁護士
鹿児島県弁護士会所属。1983年生。離婚問題・労働問題・交通事故問題を中心に、相続問題や保険トラブルなど支部管内において多くの種類の事件を取り扱う。趣味は書店めぐり。週に1度は書店に立ち寄り歴史・経済・医療分野の新書探しを楽しんでいる。最近のお気に入りは亀田俊和著の「観応の擾乱」(中公新書)。
所在エリア:
  1. 鹿児島
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