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不倫がバレ、妻から「死にたい」と責められる…「離婚して解放されたい」男性の切実な願い
離婚できる条件は?(takeuchi masato / PIXTA)

不倫がバレ、妻から「死にたい」と責められる…「離婚して解放されたい」男性の切実な願い

「離婚して、お互い平穏な日常を取り戻したい」。このように語る男性からの相談が弁護士ドットコムに寄せられています。夫婦関係が悪化した理由は、男性の不貞によるものでした。

相談者は結婚13年目で、不倫期間は約4年半だといいます。不倫発覚後は妻に謝罪を繰り返していましたが、妻は「死にたい」と執拗に訴えるようになりました。次第に結婚生活を続けることに疑問を抱くようになった相談者。妻に対して「離婚の意思を伝えても頑なに拒否されている」という状況です。

不貞行為を行った相談者は、離婚成立のためにどのように行動すべきでしょうか。高木由美子弁護士に聞きました。

●有責配偶者からの離婚請求が認められる条件とは

ーー相談者は離婚するために、どうすれば良いのでしょうか

今回の相談は、典型的な有責配偶者からの離婚請求のケースです。つまり、離婚の原因がある配偶者からの離婚請求が認められるかという問題です。

昭和27年2月19日最高裁判所大法廷判決(民集41巻6号1423頁)では、夫が不貞をし、それが原因で妻との婚姻関係が壊れてしまった場合、夫からの離婚請求は出来ないとされました。

自ら愛人を作って、妻とは結婚を続けられないから妻を追いだすなど、妻にとっては「踏んだり蹴ったり」で、夫のこんな勝手我儘は許されないとしました。つまり、有責配偶者からの離婚請求は認めず、例外も認めないという考え方でした。

その後、しばらく、裁判所は、有責配偶者からの離婚請求は一切認めないという態度だったのですが、昭和30年頃から、有責配偶者からの離婚請求でも一定の条件の下で離婚請求を認める判例が出るようになりました。

ーーどのような条件であれば、有責配偶者からの離婚請求が認められるのでしょうか

昭和62年9月2日最高裁判所大法廷判決(民集41巻6号1423頁)で、昭和27年の最高裁判例を変更し、有責配偶者からの離婚請求が信義則上許される場合は離婚請求を認めるとしました。

「信義則上許されるか否か」の判断基準としては、(1)夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間の対比において相当の長期間か、(2)夫婦に未成熟子が存在するか、(3)相手方配偶者が離婚により精神的社会的経済的に極めて過酷な状態に置かれるか、等離婚請求を容認することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情があるか枠組みを示しました。

ただ、このように最高裁判所が判例を変更して、有責配偶者からの離婚請求でも認められる場合があることを示したとしても、有責配偶者からの離婚請求が容易ではないことには変わりありません。

●相談者の場合は?

ーー相談者の場合、どのくらいの別居期間が必要でしょうか

昭和62年判決に示された基準で本件の男性について考えると、裁判で男性からの離婚請求が認められるためには、まず、長期の別居期間が必要です。

今回の相談の事例では、婚姻が13年ということなので、少なくとも10年近くは別居が必要だと思います。もしこの夫婦に子どもがいれば、その子が成人近くの年齢になっていることも必要です。また、妻や子が特に経済的に過酷な状態にならないように、生活費、教育費などを手配する必要があります。

この夫婦が既に別居しているか分かりませんが、もし、別居していなければ、それだけでも裁判所は離婚を認めてくれない可能性が高いです。

ーー相談者が離婚を認められるのは、かなり難しいのでしょうか

先ほど述べた条件は、裁判所に離婚を認めてもらうための条件であり、もし、妻が離婚、離婚条件に合意したら、長期の別居を経ることなく離婚が可能です。この状況で男性が早期の離婚を希望しているなら、妻の提示する条件を丸呑みして離婚の合意を取り付ければ離婚をすることが出来ます。

妻が「絶対に離婚はしない」と口では言っていても、本心では不倫した夫とはとっとと別れたいとは思っていて、条件によっては離婚に応じる場合もままあります。それを期待して、離婚調停を申し立て、協議を試みてみるのも良いでしょう。

●注意した方がいいのは?

ーー離婚したい有責配偶者が注意したほうがいいことはありますか

有責配偶者の夫に時々見られるのですが、妻への生活費をストップしたり、同居していた賃貸マンションを解約してしまったりして、妻を兵糧攻めにして、離婚を迫ることがあります。これは絶対にやってはいけません。

これをすると、妻から離婚の同意を取り付けることが難しくなるだけでなく、後に裁判になったときに、自分で離婚の原因を作っときながら妻にさらなる不誠実な態度をしたという心証を裁判官に抱かせ、ますます、離婚が遠のきます。

本件の男性が離婚に向けてすべきことをまとめると、次の3点です

(1)別居を開始する
(2)別居中の妻や子の生活が不安定にならないよう生活費などきちんと払う
(3)妻が離婚に応じてくれるような離婚条件を考えて提案し、合意での離婚を試みる

夫からみたら負担が大きすぎると思うかもしれませんが、これは不貞した自分が悪いので身から出た錆です。不貞をしたいのであれば、こういった状況を十分覚悟した上で不貞をする必要があると思います。

プロフィール

高木 由美子
高木 由美子(たかぎ ゆみこ)弁護士 さつき法律事務所
第一東京弁護士会所属。米国・カリフォルニア州弁護士

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