弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 離婚・男女問題
  3. 福原愛さん離婚問題、親権争いは夫・江さん有利か 日本に似た「台湾」での手続き
福原愛さん離婚問題、親権争いは夫・江さん有利か 日本に似た「台湾」での手続き
福原さんと(江さんのインスタグラムからhttps://www.instagram.com/chiang111222/?hl=ja)

福原愛さん離婚問題、親権争いは夫・江さん有利か 日本に似た「台湾」での手続き

元卓球日本代表・福原愛さんの夫で、台湾の卓球選手・江宏傑さんが、台湾の高雄地方裁判所に離婚を請求した。台湾現地メディアが4月23日に報じた。江さんの所属事務所も裁判について、報道を否定しなかったという。

福原さんをめぐっては、離婚協議中との報道もあったほか、日本滞在中に男性とのホテル宿泊不倫疑惑も報じられていた。また、夫婦には子どもがいるため、正式に離婚協議が進むとすれば、離婚の成立だけでなく、子どもの親権(監護権)をめぐる協議も必要になってくるだろう。

台湾での離婚手続きはどのように進んでいくのだろうか。そして、日本との違いは。台湾における離婚手続きに詳しい黒田健二弁護士に聞いた。

●台湾の離婚手続きは日本と似ている

ーー台湾と日本において、離婚協議に違いはありますか。日本のように、2人の話し合いだけで離婚は成立するのでしょうか。調停や裁判、離婚届の内容にも違いはあるのでしょうか

台湾では、日本と同じように、裁判所の調停や裁判手続きを経ず、夫婦2人の話し合い(離婚協議)のみで離婚を成立させることが可能です。

離婚調停や裁判は、両国とも調停前置主義を採用しており、進め方にも大きな違いはありません。また、離婚届の内容も、日本と台湾で大きな違いはありません。

台湾では、離婚訴訟の前に離婚調停が必ず行われます。台湾の「家事事件法」第3条第2項、第23条第1項によれば、離婚事件は離婚訴訟(離婚裁判)が行われる前に、裁判所による調停手続きを経る必要があるとされています。

ーー江さんは、台湾の地裁に、離婚手続きを請求したようです。これは日本でいう調停をさすのでしょうか。あるいは、当事者間での協議、調停が不成立に終わったため、裁判に移行したと考えられるのでしょうか

現地メディアの報道によれば、江さんは、2021年4月下旬に台湾の高雄地方裁判所裁に、裁判離婚の訴状を提出したということですので、江さんは、離婚の調停を申し立てたというわけでなく、離婚訴訟を提起し、裁判所の判決によって離婚を成立させたい意向があると考えられます。

よって、今回、福原さんと江さんの離婚事件についても、日本と同様、裁判手続きに入る前に裁判官を介した調停手続きを行うことになります。当該調停手続きにおいて合意に達しない場合には、裁判によって解決することになります。

●親権をめぐって考慮されること

ーー双方、親権を争うことも考えられます。台湾では、親権はどのように判断されますか

台湾民法第1055条の1によれば、裁判官は、離婚訴訟において、親権(監護権)を決定する際に、下記の事項を斟酌しなければならないとされています。

(1) 未成年の子の年齢、性別、人数、及び健康状態
(2) 未成年の子の意思及び人格発展の必要性
(3) 父母の年齢、職業、性格、健康状態、経済的能力、及び生活様式
(4)未成年の子を保護かつ教育することについての、父母の自発性及び態度
(5)親と未成年の子との間又はその他同居人と未成年の子との間の感情
(6)父母の一方は、未成年の子についての他方の権利行使(義務負担)行為に対して、妨害行為を行ったかどうか
(7)各民族の慣習、文化及び価値観

ーー今後の展開は?

一連の報道から、江さんによるモラハラの証拠が乏しく、福原さんの不貞行為と思われる写真などが多い状況から考えると、裁判では、上記事項の(2)(4)(7)を斟酌して、福原さんに不利な判断を出す可能性が十分にあると推測します。

また、離婚事件については、双方が争わず、親権と財産分与だけが主な争点であれば、通常1年程度で終わると予想されます。双方が徹底的に争えば、1年をはるかに超える可能性もあります。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

黒田 健二
黒田 健二(くろだ けんじ)弁護士 黒田法律事務所
黒田法律事務所代表弁護士、弁理士、ニューヨーク州弁護士、台北律師公会外国法事務律師。大学を1年で中退した翌年、独学で1983年度の司法試験に全国最年少の20歳で合格。1986年より日本及び香港で弁護士実務経験を積んだ後、中国(上海復旦大学法学部高級進修生課程)、デンマーク及び米国(デューク大学ロースクール)で中国法、EC法及び米国法を学ぶ。中国語・英語に堪能で、国際案件および交渉の経験も豊富。台湾政府が台湾での日本弁護士業務を認可した第1号で、2009年から現在まで台湾に法律事務所を有する唯一の日本人弁護士で、現在日本人弁護士3名と台湾人弁護士3名を台湾に常駐させている。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする