社会人になってから、少しずつ奨学金を返済している人も多いでしょう。では、結婚した場合、パートナーの家族にも返済が残っていることを伝えなければならないのでしょうか。
子育て情報サイト「ママスタ」の掲示板には、「奨学金の返済をしていることが義両親に知られてしまいました」(http://mamastar.jp/bbs/comment.do?topicId=3636817)という女性の投稿がありました。
●義両親から「結婚詐欺」かのように罵られ
女性は奨学金返済のため、結婚後も正社員で働くことを条件に結婚。しかし、育休後復帰すると「いわゆる窓際的な仕事」しか回してもらえず、退職して子どもが大きくなるまでは在宅でできる仕事をしようと考え始めました。
夫は「仕事を辞めるなら、完済してからにしてくれ」「約束と違う」と猛反対。その後「お互いの親を入れて話し合いをしよう」と言い、女性の奨学金返済がまだ残っていることを知った義両親は「結婚詐欺ばりに罵って」くるといいます。
果たして、奨学金の返済があることは義両親にも伝えなければならないのでしょうか。また、女性が結婚前の約束を破った場合、離婚の原因となってしまうのでしょうか。上将倫弁護士に聞きました。
●義両親に奨学金の返済を伝える義務はない
ーー今回のケースのように、奨学金の返済があることは義両親にも伝えなければならないのか
婚姻は、当事者の合意のみに基づいて成立する(憲法24条1項)とされています。そもそも義両親は婚姻の当事者ではないのですから、義両親に奨学金の返済があることを伝える義務はありません。
ーーでは、結婚相手に対しては、奨学金の返済があることは結婚相手に伝えなければならないのでしょうか
難しい問題ですが、奨学金を借りるというのは、よくあることですので、留学のために高額の奨学金を借りているとか、私大医学部に通うために多額の奨学金を借りたが結局医師にならなかった場合など、結婚生活に大きな影響が生じかねない莫大な奨学金の返済ならともかく、通常の奨学金の場合には、結婚相手に伝える義務まではないといえるのではないでしょうか。
もちろん、トラブル防止のためには、伝えておいた方がいいと思います。
●直接の離婚原因にもならない
ーー今回女性は結婚前の約束を破ったことになります。こうした場合、離婚の原因となってしまうのでしょうか
女性が正社員の仕事を辞めて在宅の仕事をしようとしているのは、婚姻時に予想できなかったやむを得ない事情に基づくものであり、婚姻生活を継続しがたい重大な事由と捉えるのは困難ですので、離婚原因にはならないでしょう。
ただし、この件をきっかけに夫婦関係が悪化して、その後、別居に至ってそれが長期化するような場合には、このことが新たな離婚原因になる可能性はあります。
女性が仕事を辞めたとしても、結婚詐欺にあたるとか離婚原因になるようなことはないと思います。また、相談者が奨学金の返済ができなくなった場合に、夫が肩代わりする義務はありません。
ただ、今後も、生活を維持しながら奨学金を支払っていかなければならないのですから、家計にしわ寄せがあることも否定できず、夫婦で納得する着地点を見つける必要はあるでしょう。
なかなか厳しいですが、在宅でもそれなりの収入が得られる方法を見つけるなどして、生活の目処をつける必要はあると思います。