「世界で二番目においしい〇〇」――。こんな看板やのぼりを街中で見かけたことはないだろうか?
「じゃあ、一番は何だよ」とツッコミたくなるあたり、むしろ「世界一」よりインパクトがあるかもしれない。しかし、根拠なく「世界で何番目」を名乗っても良いのだろうか。表示とその根拠をめぐる法律の話を紹介したい。
●「No.1」の表示には特に「客観性・正確性」が求められる
「業界○位」などの表示については、「景品表示法」に規定がある。鈴木義仁弁護士はこう説明する。
「商品の内容や取引条件について、(1)実際のもの、または事実に相違して競争業者のものよりも著しく優良であるという表示や、(2)実際のもの、または競争業者よりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示は、『不当表示』として景表法5条1号(優良誤認)または同2号(有利誤認)の規定に違反することになります」
たとえば、合理的な根拠なしに「難関国公立大学合格実績No.1」と表示すれば、優良誤認、「一番安い」と表示すれば、有利誤認にあたるという。
特に「実績No.1」や「一番安い」などの表示は「No.1表示」といって、強い裏付けが求められている。
公正取引委員会が2008年に出した「No.1表示に関する実態報告書」では、「No.1表示」は消費者の選択にとって有効である一方で、客観性・正確性を欠くと適正な選択を阻害するおそれがあるとされている。
不当表示にならないためには、(1)No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること、(2)調査結果を正確かつ適正に引用していること、の両方を満たす必要があるそうだ。
さらに、「カテゴリー(何についての一番か)」、「地域(どの範囲でか)」などを明瞭にすることが望ましいともされている。
●「No.2」の場合も基本は一緒 合格者数「2位」と書き「優良誤認」とされた例も
しかし、そう考えると、「世界で二番目」などの表示は問題にならないのだろうか。この点について、鈴木義仁弁護士は、次のように解説する。
「『世界で二番目』という表示も、No.1業者よりも劣るとはいえ、一般消費者にとっては、他の業者よりも著しく『優良』または『有利』であると認識されるでしょう。
したがって、No.1表示と同様に、合理的な根拠、すなわち(1)No.2表示の内容が客観的な調査に基づいていること、(2)調査結果を正確かつ適正に引用している、必要があるでしょう」
鈴木弁護士によると、過去には、とある専門学校が「社会保険労務士」の合格者数を「全国で2位」「西日本で1位」と表示していたが、実際には前者で8位、後者は3位だったとして優良誤認表示にあたるとされた事例もあるという。
●「要は消費者が惑わされなければ良い」→「世界で二番目においしい」は?
ただし、運用自体がガチガチに決まっているわけでもない。
「要は表示によって、消費者の選択が阻害されるかどうかなわけです。たとえば、『百番目の安さ』という表示だとどうでしょうか。はたして何番目くらいまでだと、著しく優良または有利にあたるのでしょうか。皆さんは、どう思いますか?」(鈴木弁護士)
こうした、曖昧さや制度の遊びは、「世界で二番目においしい」という表記にも当てはまりそうだ。鈴木弁護士は、「『おいしい』に限定してしまうと、回答はすごく難しいんですよ。『おいしい』『まずい』は、あまりにも主観的なので」と話す。
そもそも主観的な「味」について、消費者が世界○位という「自称」を鵜呑みにするだろうか。あるいは、世界○位を証明したり、否定したりできるだろうか。かといって、「世界で○番目〜」という店名でなければ、来店しただろうか…。この辺りの判断は一筋縄ではいかないようだ。
ちなみに、「世界で○番目」系のお店に「一番は何ですか」と聞くと、「家庭の味」と返ってくることもあるようだ。