「覚醒剤入りの紙袋を落としました」ーー。名古屋市に住む31歳の女性が4月10日、自宅近くの警察署を訪れ、そのまま逮捕されました。
報道によると、女性が紙袋を落としたのはタクシーの中でした。運転手が落とし物として警察署に届けたところ、覚醒剤入りのビニール袋が入っていたため、捜査していたそうです。
報道では、女性のことを「出頭」と表現しています。同じように「私がやりました」と警察を訪れる行為に「自首」もありますが、2つはどう違うのでしょうか。松岡 義久弁護士に聞きました。
●自首は出頭の一部
ーー「自首」と「出頭」の違いは何ですか?
「出頭」というのは、法律用語ではなく、ある場所(特に、役所や警察など)に出向くことを指します。ですから、「警察に出頭した」とあるのは単に「警察に行った」、あるいは「警察に犯罪の申告をした」という事実を述べているだけです。
一方、「自首」というのは、刑法第42条に規定のある法律用語で、捜査機関に発覚する前に自ら進んで犯罪事実を申告することです。「発覚前」というのがポイントです。
ーー出頭のうち、発覚前に申告することを「自首」と呼ぶわけですね。今回のニュースでは「出頭」が使われていますが?
報道では、犯行が発覚した後に警察に行くなど、「自首が成立しない」という趣旨で「出頭」が使われることがあります。今回は、すでに警察が捜査していたことから自首が成立しないとの趣旨で報道された可能性もあります(犯罪が発覚していても、犯人が発覚していなければ自首は成立します)。
ただし、すでに述べた通り、出頭は自首を含む広い概念の言葉です。報道では、自首が成立する場面でも使われることがあり、厳密に使い分けられているとは限りませんので、出頭に至る状況を確認する必要があります。
●出頭にもメリットはある
ーー自首すると刑が軽くなると言いますが、出頭のメリットはないのでしょうか?
自首が成立すると、「その刑を減軽することができる」と規定があります。この減軽については、たとえば死刑なら無期懲役などに、無期懲役なら7年以上の有期懲役に減軽される旨が規定されています(刑法第68条)。
一方、自首が成立しない場合の出頭について、減軽に関する規定はありません。もっとも、出頭した経緯から反省や更生意欲などが見られる場合には刑が相当程度軽くなることはあるので、その点ではメリットがあると言えます。