2018年04月25日 09時45分

「税金泥棒」批判受ける福田、佐川氏の退職金「計1億円」、支給制限が難しいワケ  

「税金泥棒」批判受ける福田、佐川氏の退職金「計1億円」、支給制限が難しいワケ  
写真はイメージです(route134 / PIXTA)

「最強官庁」の財務省が大揺れだ。セクハラ疑惑を受け辞任表明していた福田淳一事務次官の辞任が4月24日、閣議で了承された。退職金は規定では約5300万円。共同通信によると、麻生太郎財務相は退職金の支払いを保留し、疑惑の調査結果次第では減額する考えを明らかにしたという。

また、決裁文書の改ざん問題で国税庁長官を3月に辞任した佐川宣寿氏には、懲戒処分による減額分を考慮しても、約4900万円の退職金が支払われることが報じられている。2人はともに1982年入省の同期だ。

現状では2人合わせて、1億円もの退職金が支払われる可能性があることに、Twitterなどでは「税金泥棒」などといった批判も見受けられる。世間を騒がせ、行政の信頼を損ねたとしても多額の退職金を支給できる根拠はどこにあるのか。秋山直人弁護士に聞いた。

●退職金の支給差止・制限、いくつものハードル

ーー根拠となる法律を教えてください

「国家公務員の退職金は、『国家公務員退職手当法』という法律に支給の根拠があります。法律で支給すべきことが定められていますから、退職者にとって退職手当の受給は法律上の権利であり、そう簡単に退職金の支払を止めたり減額することはできません」

ーー支給をしないことができるのは、どういったケースでしょうか

「国家公務員退職手当法では、退職手当の全部又は一部を支給しないこと(支給制限)ができるのは、大まかにいって、次の3パターンです。

(1)退職者が、在職期間中の行為に関して、退職後に禁固以上の刑に処せられたとき

(2)退職手当管理機関(退職当時に当該職員に対して懲戒免職等処分を行う権限を有していた機関)が、在職期間中に退職者が懲戒免職等処分を受けるべき行為をしたと認めたとき

(3)懲戒免職等処分を受けて退職したとき

『懲戒免職等処分』とは、懲戒免職処分その他、職員としての身分を当該職員の非違行為を理由として失わせる処分をいい、減給等の懲戒処分は含みません」

ーー仮にこの3パターンに該当したとしても、他に考慮される事情はありますか

「これらに該当した場合でも、退職手当のうちどれだけを支給しないこととするかは、当該退職者が占めていた職の職務及び責任、当該退職者が行った非違の内容及び程度、当該非違が公務員に対する国民の信頼に及ぼす影響その他の事情を勘案することとされています。

また、退職手当の支払を一時差し止めることができるのも、退職者が逮捕されたり、起訴されたときや、退職手当管理機関が、当該退職者について、調査の結果、犯罪行為を行ったと思料するに至ったとか、在職期間中に懲戒免職等処分を受けるべき行為をしたことを疑うに足りる相当な理由があると思料するに至ったとき等に限られています」

●佐川氏、逮捕・起訴なら支給差止も

ーーそれでは、本件についてはどう思われますか

「ここからは私見ですが、セクハラ疑惑を受けて辞任表明した福田事務次官については、セクハラ疑惑が事実であったとしても、女性記者に対し、性的いやがらせに当たる発言をしたというにとどまり、逮捕・起訴されて刑事罰を受けるに至る行為ではないと思います。

さらに、懲戒免職に値するほどの重大な非違行為との評価も難しいと思いますので、退職手当の支給制限は難しいように思います」

ーー佐川氏についてはいかがでしょうか

「学校法人『森友学園』への国有地売却に関連する財務省の決裁文書の改ざん等に関与したとの疑惑のある佐川前国税庁長官については、虚偽公文書作成や背任の容疑で告発状が出ているとのことであり、逮捕・起訴される事態に至れば、退職手当の支払差止や支給制限があり得ると思いますが、立件見送りとの報道も出ているところです。

懲戒免職に値するほどの重大な非違行為といえるかについても、背任の事実や決裁文書の改ざんへの積極的関与が認められなければ、支給制限をすることは考えにくいでしょう。

辞任の理由とされた、国会対応に丁寧さを欠き審議の混乱を招いた、行政文書の管理状況についてさまざまな指摘を受けた、決裁文書の国会提出時の担当局長だった、という程度では、難しいと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

秋山 直人弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は溜池山王にあり、弁護士3名で構成。不動産関連トラブル、企業法務、原発事故・交通事故等の損害賠償請求等を取り扱っている。
事務所URL:http://tatsuki-law.com
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