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子どもの「自画撮り」要求に罰則…兵庫県の条例改正案に奥村弁護士が疑問の声
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子どもの「自画撮り」要求に罰則…兵庫県の条例改正案に奥村弁護士が疑問の声

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中高生が自分の裸姿をスマホで撮影して、LINEなどで他人に送る「自画撮り」の被害が広がっている。こうした状況を受けて、兵庫県はこのほど、18歳未満の相手にそうした画像を「要求する行為」を罰則付きで禁じる条例改正案を12月議会に提出する方針を示した。

2016年に自画撮り被害にあった中高生は、全国で480人にのぼっている。主に、インターネットの交流サイトを通じて知り合った相手に画像を送っているという。兵庫県内では、2015年は23人、2016年は29人と被害が広がっている。

もちろん現行法でも、自画撮りを脅迫して求めたり、実際に入手したりしていれば、違法となる。だが、「要求」だけでは、罰することはできない。そのため、改正条例案では、相手をだますなどして要求する行為を禁止するという。成立すれば、全国初となるそうだ。

条例改正案の詳細はまだ明らかになっていないが、児童ポルノの問題についてくわしい奥村徹弁護士は「実効性は期待できない」「条例改正の必要性は乏しい」と指摘する。はたして、どんな問題があるのだろうか。奥村弁護士に聞いた。

●「児童ポルノ対策」には地域性がない

「まず前提として、法律上、児童ポルノの提供目的製造罪や提供罪の主体から、児童本人が除外されていません(児童ポルノ法)。そのため、『自画撮り』の場合、児童本人も提供犯人となりうるという裁判例(広島高裁2014年5月1日、神戸地裁2012年12月12日)もあります。

つまり、児童を被害者とする製造行為について、児童本人も処罰されるという解釈でいいのか、という問題があるのです。こちらについては、国レベルで議論する必要があると思います」

では、児童に「自画撮り」を求める行為についてはどうだろうか。

「そもそも、『自画撮り』はインターネットを介しておこなわれます。県境を越えますし、児童ポルノ対策は法律の守備範囲であって、地域性がありません。東京都でも同様の規制が検討されていますが、児童ポルノ法の改正によって対応すべきだと思います」

●逆に「適用されない場合」が広くなる

それでも条例改正の必要はないのだろうか。

「今回報じられているような、欺罔・威迫・困惑によって、『性器の写真を撮って送れ』などと青少年に裸の写真の撮影・送信を求める行為は、兵庫県条例の『わいせつ行為』あるいは『わいせつ行為を教える行為』として処罰できる余地があります(同条例21条)。条例改正の必要性は乏しいと思います。

また、威迫・欺き・困惑という要件は、大阪府・山口県・長野県の青少年条例(淫行)の要件となっていますが、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪における『暴行・脅迫・抗拒不能』に至らない程度のものという微妙な概念なので、立証が難しく、ほとんど適用されることがありません。

実際には、自画撮りは『胸送ってよ』『いいよ』という安易な要求でおこなわれているものがほとんどです。威迫・欺き・困惑という要件を加えると、逆に適用されない場合が広くなり、実効性は期待できないでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

奥村 徹
奥村 徹(おくむら とおる)弁護士 奥村&田中法律事務所
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。

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