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食べ残しを「お持ち帰り」できる常連向けサービス…食中毒が発生したら誰の責任?
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食べ残しを「お持ち帰り」できる常連向けサービス…食中毒が発生したら誰の責任?

街の飲食店では、常連客だけにこっそり提供されるサービスがある。東京都内の主婦、J子さんは行きつけの中華料理店で「食べ残したので、持ち帰りさせてください」とこっそり依頼すると、店主が「はいはい、いいよ」と小声で応じてくれるそうだ。メニューにも書かれていないサービスで、いつもは声の大きい店主が小声になることから、「常連向けサービスなのかな」と捉えている。

しかし、4月の暖かい日、いつものように依頼すると「いいけど、もう暑いからすぐ食べて。食中毒になると店の責任になっちゃうから」と言われたそうだ。J子さんは、「メニューにないことを客が依頼しているので、客の自己責任だと思っています。法的にはどうなんですか」と気になっているそうだ。一藤剛志弁護士に聞いた。

●持ち帰りについて「明確な法律上の定めはない」

「食べ残しの持ち帰りについては、明確な法律上の定めはありません。このため、持ち帰り自体は禁じられていないといえます。

しかし、持ち帰ったものを客が食べて体調を崩した場合、店側に一切責任が無いかといえば、そうではありません。

食品衛生法では、腐敗していたり、不潔で人の健康を損なうおそれがあったりするものの販売等は禁止しています(食品衛生法第6条)。

食べ残しがこれらにあたるとすると、食品衛生法違反となり、店側は営業禁止や停止の処分を受けたり、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられたりする可能性があります。また、客に対しても損賠賠償責任が生じます」

今回のように、店内で食べた時には問題がなく、その後の保管状況などにより食中毒が発生した場合でも、同じように法的な責任が生じるのだろうか。

「持ち帰りの時点では特に問題のない食品だったとしても、店側の説明不足等により、その後の保管状況が悪かったり、時間が経ちすぎてから食べたりして、客が体調を崩した場合には、店側の過失として客に対する損害賠償責任が発生します。

この場合、客側にも落ち度があれば、過失相殺として賠償額が減額されることもあり得ますが、店側の過失がある以上は店側の責任は無くなることはありません。店側が持ち帰りを認めるときは、客に食中毒予防のための厳重な注意喚起を行うことは必須です。

食品ロスの削減に向けた取組みは重要ですし、食べ残しをもったいないと思う気持ちも大切です。客としても食べ残さない程度の注文を心がけるなど、ムダを無くしていきたいですね」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

一藤 剛志
一藤 剛志(いちふじ つよし)弁護士 弁護士法人TNLAW支所立川ニアレスト法律事務所
東京多摩地域を中心に一般民事、中小企業法務、家事、刑事など幅広く扱う。弁護士会多摩支部中小企業プロジェクトチーム座長、ITに関するワーキンググループ座長、公益社団法人立川法人会 監事

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