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「今後も同様の判断がなされる」 高浜原発・運転停止命令、住民側の弁護士が解説
関西電力のホームページより

「今後も同様の判断がなされる」 高浜原発・運転停止命令、住民側の弁護士が解説

大津地裁は3月9日、関西電力が保有する福井県の高浜原発3・4号機の運転差し止めの仮処分を認める決定を下した。司法判断で、福島第一原発事故後に再稼働した原発の運転を禁止するのは初めて。関西電力は、この決定を不服として3月14日、大津地裁に執行停止と異議を申し立てた。今後は「異議審」で審議されることになる。

今回の争点は、耐震設計で想定される最大の揺れの強さである基準地震動を700ガルとした関電の想定や、原子力規制委員会が定めた原発の新規制基準の妥当性などだった。

関西電力の原発では、同じ福井県の大飯原発3・4号機も差し止め訴訟の控訴審が継続中。大飯原発については、2014年と2015年4月に運転を禁止する判決が出ている。判決は2015年12月に取り消されたものの、原発の再稼働について、司法の判断は注目されている。

高浜原発についての今回の決定には、どのような意義があるのだろうか。運転差し止めを求めた住民側弁護団の一員で、大飯原発3・4号機の差し止め訴訟では、住民側弁護団の事務局長を務める笠原一浩弁護士に話を聞いた。

●原発の安全性について高度の立証求める

今回の大津地裁決定は、コンパクトながら、耐震設計の基準になる「基準地震動」などの問題点について、かなり理論的な追究を行っているといえます。原発の安全性について、電力会社側に高度の主張・立証を求める内容です。

大飯原発の運転差し止めを命じた2014年と2015年4月の福井地裁判決と合わせて考えると、原発の安全性に対する要求は、特定の裁判官の見解ではなく、広く国民一般の良識を反映したものであることが明らかになったといえるでしょう。

もし、関西電力や原子力規制委員会がこれらの司法判断を無視し続ければ、今後の異議審等でも同様の判断がなされる可能性が相当高いものと思われます。

以下、決定の内容をもう少し詳しく見てみましょう。

●規制委員会の自滅が招いた「必然」

2014年5月21日に福井地裁が大飯原発3・4号機の運転差止を命じる判決を言い渡したのは、言うまでもなく、生命の喪失を含む、福島原発事故の深刻な被害を重く受け止めたからです。

高浜原発について、住民側の申立を棄却した2014年11月の大津地裁決定も、基準地震動の策定方法など、原発の危険性そのものは福井地裁判決と同様の認識に立ちました。

では、なぜ当時は、申立を棄却したのか。それは、仮処分においては、住民が関電に差し止めを請求できるか(被保全権利)に加え、判決を待てないほどの緊急性が必要であるかどうか(保全の必要性)という点が求められます。当時の大津地裁は、このような危険な原発について、規制委員会が「いたずらに早急に…再稼働を容認する」はずがないと判断したのです。

つまり、2014年の大津地裁決定は、いわば「あるべき」規制委員会の存在を前提として、規制委員会に慎重な審理を求めたものといえます。

しかし、「現実」の規制委員会は、2014年大津地裁決定にもかかわらず、「いたずらに早急に…再稼働を容認」してしまいました。今回の大津地裁決定は、規制委員会の自滅が招いた、いわば必然といえます。

●伊方最高裁判決と矛盾しないか?

一方、大飯3・4号機の運転差し止めを命じた福井地裁判決は、その理由として、

(1)基準地震動を超える地震動が大飯原発を襲う可能性があること

(2)基準地震動以下の地震動によってすら、外部電源や主給水ポンプが破損し、原子炉の冷却ができなくなる可能性があること

(3)使用済み核燃料が堅固な容器で覆われていないこと

など、基準地震動の問題点を端的に分かりやすく指摘しました。今回の大津地裁決定は、コンパクトながら、より理論的な追究を行っているといえます。いくつか代表的なものを取り上げます。

まずは、原発の安全性の立証責任について触れた、伊方原発訴訟の最高裁判決との関連性を見てみましょう。

この裁判の判示では、原発の安全性について、被告である行政側に「判断に不合理な点のないことを相当の根拠・資料に基づき主張・立証する必要」があるとしており、「立証を尽くさない場合」には、「判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべき」と述べています。

3.11以前の民事訴訟では、この判示がしばしば曲解され、規制当局の審査を通ったことをもって「主張・立証を尽くした」ことにされてしまいました。しかし、今回の大津地裁決定では、この部分が的確に理解されています。

また、福島第一原発事故の実態を受けて、原子力規制に関する多くの法律が改正されましたが、この法改正の趣旨もしっかりと汲み取られています。

また原発差止に限らず、仮処分においては一般に、被保全権利に加えて緊急性が要求される反面、申立人は権利の存在を「証明」することまでは必要なく、「疎明=一応確からしいことを示す」ができればよいとされています。

大津地裁はこれらの点を踏まえて、電力会社側に安全であることに関する高度の主張・立証を求めました。

なお、2015年4月福井地裁決定を取り消した同年12月の決定は、「危険性が社会通念上無視できる」という一見これに類する基準を立てましたが、住民側が提出した著名な科学者・技術者の意見書を無視するなど、総論と各論が矛盾していました。

●安全性の立証について

では、今回の大津地裁決定は、どの程度の主張・立証を求めたのか、基準地震動を例に見ていきましょう。

決定では、断層の長さと地震の規模の関係を示した、統計的な関係式「松田式」について、次のように述べています。

「松田式が地震規模の想定に有益であることは当裁判所も否定するものではないが…科学的に異論のない公式と考えることはできず…現段階においては一つの拠り所とし得る資料とみるべきものである」(49p)

つまり、採用した方法が単に「有益である」だけでは足りず、「科学的に異論のない」ことまで求めています。これは、批判的科学者の見解を排除し続けた結果、福島原発事故が起こったことを考えれば、極めて当然のことです。

また、今回の決定の背景として、2014年大津地裁決定の警告にもかかわらず、規制委員会がこれを無視したことも挙げられるでしょう。決定はこう述べています。

「二度と同様の事故発生を防ぐとの見地から安全確保対策を講ずるには、原因究明を徹底的に行うことが不可欠である。この点についての債務者の主張及び疎明は未だ不十分な状態にあるにもかかわらず、この点に意を払わないのであれば、そしてこのような姿勢が債務者ひいては原子力規制委員会の姿勢であるとするならば、そもそも新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えるものと言わざるを得ない」(44p)

●異議審でも同様の判断がなされる可能性

今回の大津地裁決定により、2014年福井地裁判決や、2015年4月福井地裁決定は、決して特定の裁判官の見解ではなく、広く国民一般の良識を反映したものであることが明らかになりました。

そのため、最初に述べたように、もし、関西電力や規制委員会がこれらの司法判断を無視し続ければ、今後の異議審等でも同様の判断がなされる可能性が相当高いものと思われます。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

笠原 一浩
笠原 一浩(かさはら かずひろ)弁護士 みどり法律事務所
1976年 福井市生まれ 98年 京大理学部卒(地球物理学専攻) 1998-2001年 社会福祉法人共生福祉会(通称わっぱの会)職員 2004年 福井弁護士会登録 06年 みどり法律事務所開設 日弁連 公害対策・環境保全委員会 エネルギー・原子力前部会長

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