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【新・弁護士列伝】親子、夫婦、兄弟…こじれた家族関係をほどき、人生の再出発をサポート 新保英毅弁護士インタビュー
新保英毅弁護士

【新・弁護士列伝】親子、夫婦、兄弟…こじれた家族関係をほどき、人生の再出発をサポート 新保英毅弁護士インタビュー

弁護士ドットコムニュースでは、一般の方々に弁護士をもっと身近に感じていただくために、学生による弁護士へのインタビュー企画をおこなっています。

今回お話を伺ったのは、新保英毅弁護士(新保法律事務所)です。離婚や相続といった、家族間のトラブル解決に注力している新保弁護士。依頼者の悩みや気持ちを丁寧にヒアリングし、オーダーメイドの解決策を提供することにこだわっています。

インタビューでは、弁護士を目指したきっかけや、注力分野への思い、特に印象深い事案などについて、お話いただきました。

自己主張が苦手だった学生時代

−弁護士を目指したきっかけや理由を教えてください。

私は学生時代、おとなしいタイプでした。自分の思っていることを上手く言えず、もどかしい思いをすることが多かったです。集団で話しているときに「違うのではないか」と思っても、声が大きい人には言い返せませんでした。

学生時代のもどかしい思いから、おとなしい性格でも弁護士の資格があれば、「違う」と言えるのではないかと思いました。また、私のように気が弱く、自分の意見が言えずに苦しんでいる人の力になりたいと思い、弁護士になりました。

−弁護士登録してから独立に至るまでの経緯を教えてください。

弁護士登録をして、京都府にある小西法律事務所に8年間勤務したのちに独立しました。小西法律事務所は当時70歳代の所長弁護士と私だけの小さな事務所です。師匠と弟子のような関係性で様々なことを学ばせてもらいました。

所長弁護士は懐が深く、器が大きい方で、負けそうな事件ほど粘りを発揮するタイプの弁護士。普段は「あんたに全部任せているで」と任せてくれていました。でも「裁判に負けそうになったらワシが出ていく」と言ってくれていました。

案件がうまくいくと勤務弁護士である私の手柄にしてくれました。逆に上手くいかず、依頼者が私に怒りを向けてきた時には、所長弁護士が矢面に立って対応してくれました。人間として器が大きい方で、今私が一番目標にする弁護士です。

小西法律事務所はすごく居心地が良く、このまま所属し続けるか独立するか迷いました。当時、一通りのことはできるようになって、何でも自分でできているつもりになっていたんです。今思うと、最後は責任を取る立場ではないし、どこかに甘えがあったと思います。所長弁護士に守られた状態で好きにやっていたに過ぎませんでした。独立したら、お客さんから依頼を受けて、事件を処理し、最後にお金を請求するところまで全部自分の責任。上手くいかなかったら報酬も入ってきません。自分1人で全てやれるようにならないといけないなと思い、独立しました。

−注力分野およびその分野に注力している理由を教えてください。

離婚と相続です。人生の中で一番大変なところに関わる分野だと思っています。

離婚をすると家族関係が大きく変わってしまいます。離婚を請求された側にとっては非常に切ない出来事です。一方で離婚をきっかけに人生を再出発する人もいます。特に熟年離婚でよくあるパターンです。

妻としての役割、夫としての役割の固定を当たり前だと思い、抑圧されてきた人が、離婚をきっかけに、自由に生きる人生を再出発できる。そんなふうに、依頼者が離婚後の人生を前向きに歩めるような解決ができたときはやりがいを感じます。

相続問題も人間関係が大きく関わってきます。相続問題は、親が亡くなって兄弟姉妹間で争うパターンが一番多いです。問題は大きく分けて2つ出てきます。1つは兄弟姉妹の中で、親からの愛情、親に対する貢献が一番大きいのは誰かという問題。もう1つは親子関係。実際に争うのは兄弟姉妹ですが、根本には、子供個人と亡くなった親との問題が大きく関わってきます。親が亡くなっているので、不満や恨みを親には言えません。代わりに、自分よりも親に良くしてもらっていた兄弟姉妹に矛先が向き、「なぜお前だけ取り分が多いんだ」などと不満が噴出して争いに発展してしまうようです。

ただ、当事者間で話し合う過程で、自分の知らなかった、親と兄弟姉妹の関係に気が付くこともあります。親の知られざる人生のエピソードを知って、考え方が変わることもあるみたいです。親が亡くなっていても、生前とは違った関係を結び直すことができる場合もあります。依頼者の方が家族の問題から前に進めた時、やりがいを感じます。

−家族間の紛争は複雑な問題ですね。

相続は特に問題が根深いことが多いです。依頼者は、もう50代、60代の方々。お話をよくよく聞いてみると学生時代の出来事をまだ心に留めているんです。「自分は親から進路を決められたのに、弟は自分の好きな道に進んだ」といった兄弟格差の問題をよく話されています。もやもやしたものをずっと抱えて生きている方は多いです。

「先生が話を遮った」苦い経験から得た教訓

−どんな相談が最も多いですか。京都特有の事件、相談があったら教えていただきたいです。

一番多い相談は離婚案件です。離婚案件を沢山扱っていると弁護士ドットコムのプロフィールページに載せている影響もあります。離婚と、次いで相続の相談が圧倒的に多いです。京都は大学生が多いので、大学生が関わる刑事事件も多いという印象があります。

−一般の人はあまり重大ではないと考えていても、実は弁護士に相談したほうが良い事例はありますか。

離婚したときの財産分与ですね。対象となる財産がきちんと把握されないまま金額に合意してしまい、後から「もっともらえたのに」と後悔される方が多いようです。一度財産分与に合意してしまうとやり直すことは難しいんです。特に専業主婦の方の場合、今後の生活のためにも、お金はかなり切実な問題です。

離婚するときは、「早く解放されたい、結婚生活を1日でも早く終わらせたい」という気持ちから、本来よりも低い金額での財産分与に合意してしまい、不利になる場合があります。財産分与は一度弁護士に相談したほうが良いと思います。

−依頼者の方から相談を受けるときに、意識していることはありますか。

依頼者の方の話をよく聞くことです。以前、依頼者の方の話をきちんと聞かず、失敗してしまったことがあります。依頼者の方の話のポイントがわかった時点で、私が重要ではないと判断したところは話を聞かなかったんです。後日、実はものすごく重要な事実を聞き逃していたことに気がつきました。「なんで言ってくれなかったんだ」と依頼者に言うと「先生が話を遮ったじゃないですか」と言われてしまい、反省しました。

依頼者自身が自分のことを全部話すことは問題解決のための第一歩であり、必要なプロセスだと思っています。問題を解決しなければいけないのは依頼者本人で、弁護士は解決を手伝うのが仕事です。まずは、依頼者が自分の置かれている状況をきちんと認識して説明することが絶対に必要だと思っています。

解決案がすぐに出なくても、弁護士に話をすることで気持ちが整理できたり、不安が和らいだりすることがあります。初回相談では、一見関係ない話でもとにかく話したいことを話してもらおうと思っています。

弁護士として依頼者の人生の岐路に立ち会う

−最近気になるニュースや事件はありますか。

1つ目は、少し前のニュースですが、2019年の大津園児死傷事故です。右折車と対向の直進車が衝突追突し、その巻き添えで複数の園児らが亡くなった大変悲惨な事故でした。しかし、右折車と対向直進車の衝突という事故態様自体は、交通事故ではよくあるケースで、誰にでも起こり得る事故です。私が着目したのは、SNSでの批判。加害者に対する批判的な意見が多く発信されていました。

今は誰でもSNSで情報発信できます。大津の事件では「この加害者は叩いてもいい」という雰囲気が醸成されてしまい、袋叩きが起きました。投稿している方は袋叩きしている意識はないと思うんです。自分の意見を発信するか、誰かの意見に賛同しているだけという認識なのではないでしょうか。SNSでみんなが自分の意見を発信した結果、いつのまにか袋叩きの状態になってしまうのが恐ろしいなと感じました。

−弁護士として活動してきた中で、一番印象的だったエピソードを教えてください。

一番嬉しかったのは、案件が終わって数年後に依頼者から手紙が来た時です。10年くらい前に、当時、大学入学直後だった依頼者の刑事事件を担当しました。濡れ衣を着せられていて、このままでは退学になってしまう状況でした。結果的に不起訴になって退学も免れ、無事解決しました。数年後に「大学を卒業しました。希望のところに就職できました。」と手紙が来ました。自分が依頼者の人生の岐路に良い形で関われたことが後からわかり、とてもうれしかったです。

辛かったのは相続問題です。相続人が長男と次男で、私は次男から依頼を受けていた案件がありました。親の遺言の中で「長男に多く相続させる」と書いてあったんです。理由として「次男は私に対して虐待をした」「暴力を振るった」といった、明らかに「嘘だろう」と思われるようなことがたくさん書いてありました。

依頼者は、遺言で自分への批判を書かれたことへの怒りの感情と、「なぜ自分がそんなことを言われるのかわからない」と複雑な気持ちがあったようです。相続の取り分が少ないことよりも、親がなぜ自分を批判した遺言書を残して亡くなったのかをずっと気にしていました。親に聞きたいけれど、親はもういない。自分の中で辛い気持ちをどうやって昇華すれば良いのかわからなくなっていました。私も弁護士として、辛い立場に置かれた依頼者に「辛いですね」と言葉をかけることはできても、どうしたら気持ちを昇華させられるのかは、答えが出ませんでした。苦い思い出として記憶に残っています。

−休日はどんな過ごし方をされていますか。

体を動かすことが好きなので、市民プールで泳いだり、テニスをしたりしています。コロナ以前は国内旅行が好きでした。おすすめは淡路島です。大阪からバスで1本、2時間で行けます。日帰りもできてアクセス抜群です。

−今後の展望をお聞かせください。

依頼者に喜んでもらえるような弁護士になりたいです。今のところ、事務所を大きくしたいとは思っていません。依頼者に満足してもらえると、同じような問題を抱えている方を紹介してもらえることがあります。紹介が増えていけば、「自分の事件処理は良かったんだ」と思えます。依頼者の満足度を上げて、新たな依頼者の紹介が増えていけば良いなと思っています。

−最後に法律トラブルを抱えて悩んでいる方へ、メッセージをお願いいたします。

日々様々な事件に取り組む中で、人生では辛いことや苦しいことは誰にでも起こることなのだと感じます。辛い時に1人で悩まないでください。まず、人に話すだけでも楽になることもあります。弁護士が法的なところをお手伝いして、不安や困難を乗り越えられるようサポートさせていただきたいと思っています。

プロフィール

新保 英毅
新保 英毅(しんぼ ひでたか)弁護士 新保法律事務所
2004年弁護士登録。相続・遺産分割事件、中小企業の法務の案件を多く取り扱っている。モットーは「依頼者ひとりひとりに適したオーダーメイドのサービス」。

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