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運転中「ポケモンGO」で男児死亡、弁護士「これまで以上に重い責任の可能性」
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運転中「ポケモンGO」で男児死亡、弁護士「これまで以上に重い責任の可能性」

愛知県一宮市で10月26日、横断歩道を渡っていた小学4年生の男子児童(9)が、トラックにはねられ死亡する事故が起き、男性運転手(36)が過失運転致傷の容疑で逮捕された。運転手が「ポケモンGOを使用していた」と供述していることに注目が集まり、「運転中にポケモンGO」などの見出しで大きく報じられた。

報道によると、男性運転手(36)の逮捕容疑は、はトラックを運転して、同市内の市道で、信号のない交差点の横断歩道を渡っていた児童をはねた疑い。男性は「車での移動中はポケモンGOを必ず起動させていた」と話していることから、県警は前方不注意が事故の原因だと見て捜査を進めている。

運転中にスマートフォンを操作することは法的にはどのような問題があるのか。その結果事故を起こした場合、通常の事故と比べて重い法的責任を負う可能性はあるのか。伊藤諭弁護士に聞いた。

●「注意義務違反は非常に大きい」

「スマートフォンを操作しながら運転をして、死亡事故を起こした場合、刑事上の責任、行政上の責任、民事上の責任に問われる可能性があります」

伊藤弁護士はこのように指摘する。さまざまな責任が発生する可能性があるようだ。具体的にはどんな責任なのか。

「まず刑事上の責任ですが、自動車運転死傷行為処罰法に定める過失運転致死罪にあたり、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金を科せられるおそれがあります。

スマートフォンの操作により、前方注視義務という極めて基本的な注意義務違反である上、ゲームの操作には何ら緊急性も認められないことから、その注意義務違反は非常に大きいと言えます。

実際、10月31日には、ポケモンGOを操作しながら運転して2人を死傷させた事案で実刑判決が言い渡されたという報道もありました」

●「これまでの携帯電話使用以上に厳しく判断される傾向にある」

「次に、行政上の責任です。

主に免許の停止や取消し等に関する処分ですが、携帯電話使用により交通の危険を生じさせた場合2点、さらにそれによる事故により死亡の結果を生じさせた場合20点が加算されますので、仮にこれまで行政処分を受けたことがない場合でも、免許が取り消されます。

最後に民事上の責任です。

被害者に生じた損害をどの程度賠償する義務があるのかという問題で、スマートフォンの操作が加害者と被害者の過失の割合に影響してくる可能性があります。

運転中のスマートフォンの操作という基本的な注意義務違反があるので、加害者側の過失を通常よりも大きく認められることになるとおもいます。

もっとも、今回の事故では、横断歩道を渡っていた児童が被害者ということで、もともと加害者の過失が100%の事案であると思われます。また、悪質な事故態様が、慰謝料額に影響することも考えられます。

ゲームの操作の場合、運転中に電話がかかってきたとか、メールが来てつい読んでしまったという場合よりも、緊急性は低く、同情できる余地は少ないので、これまでの携帯電話使用以上に厳しく判断される傾向にあると考えます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

伊藤 諭
伊藤 諭(いとう さとし)弁護士 弁護士法人ASK川崎
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。中小企業に関する法律相談、弁護士等の懲戒請求やトラブル対応などを手がける。第一法規「懲戒請求・紛議調停を申し立てられた際の弁護士実務と心得」著者。

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