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焼き肉用に提供された「牛のレバー」 客が勝手に「生」で食べたら店の責任?
焼き肉店の客が「焼いて食べるためのレバー」を勝手に生で食べて、食中毒を起こしたら・・・

焼き肉用に提供された「牛のレバー」 客が勝手に「生」で食べたら店の責任?

2012年7月から飲食店での提供が禁止されている「レバ刺し」。いくら禁止されていてもあの独特の味わいが恋しいという方も少なくないだろう。

京都府内の焼き肉店でこのほど、牛の生レバーを客に提供したとして、経営者と店長が食品衛生法違反で略式起訴され、京都簡裁から罰金を命じられた。報道によると、その店では「特上焼きレバー」という呼び名で、「レバ刺し」を提供していた実態があったという。

こんな事件が起きてしまうほど、人気は根強いようだ。それでは、焼き肉店の客が「焼いて食べるためのレバー」を勝手に生で食べて、食中毒を起こした場合、店の責任はどうなるのだろうか。客を制止したり、注文を拒否する義務が店にはあるのだろうか。好川久治弁護士に聞いた。

●店は「焼いてください」と言うだけではダメ

「焼き肉店は、牛レバーの生肉を提供する場合、焼いて食べることを前提としなければなりません」

好川弁護士はこのように切り出した。どんなルールで、そう決まっているのだろうか?

「食品衛生法11条2項は、厚生労働大臣が調理方法等について基準を定めた食品について、基準に合わない方法による食品の販売をしてはならないとしています。そして2012年7月から、厚生労働大臣が定める『食品、添加物等の規格基準』によって、牛の肝臓(レバー)は生食用としての販売が禁止されています。

違反者には、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金(情状により懲役と罰金の両方)が科せられます(同72条1項)。なお、法人には1億円以下の罰金が科せられ(同78条1号)、他に営業停止などの行政処分(同55条1項)も行われる可能性があります」

店側には、どこまでの義務が要求されているのだろうか。たとえば「焼いてください」と伝えれば、義務を果たしたことになるのだろうか?

「厚生労働大臣が定める基準では、焼き肉用として生レバーを提供する場合、顧客に牛の肝臓を中心部まで十分に加熱してから食べる必要があること等、必要な情報を提供しなければならないとされています。

通達でも、事業者は、(1)必ずコンロ等の加熱設備を提供すること、(2)メニューには『加熱用』『調理の際に中心部まで加熱する必要がある』『食中毒の危険性があるため生では食べられない』等を記載すること、(3)生で食べている顧客がいる場合には加熱して食べるよう注意喚起すること、などが求められています」

●客が注意を守らない場合は、注文を拒否する義務も

焼き肉店での食中毒事件が大問題となっただけはあり、こうした提供時のルールも細かく決まっているようだ。好川弁護士は続ける。

「したがって、焼き肉店の客が、焼き肉用として提供されたレバーを勝手に生で食べている場合には、店側は加熱して食べるよう注意する義務があります。また、客が注意を守らず生で食べ続ける場合には、注文自体を拒否する義務もあると考えられます。

もし店側が義務を怠り、生レバーを提供し続けると、食品衛生法違反に問われる可能性もあると思います」

店の経営者としては、客が勝手に生レバーを食べて食中毒を起こした場合のリスクも、視野に入れておかなければならないのだろうか。

「店側が事前に客が生で食べることを予見でき、これを回避できたのに、生レバーを提供し続けたために客が生レバーで食中毒を起こしてしまった、という場合には、客が被った損害を賠償しなければなりません。

こちらについては、危険を承知で生レバーを食べた客にも相当大きな過失がありますので、賠償額は大きく減額されることになるでしょう。しかし、店側が責任を免れることはできません。なお、同様の事案で、客の過失を5割と認定した先例が存在します」

つまりその判決では、店の責任と客の責任はそれぞれ半分ずつという判断をしたようだ。こうなると、いくら客が「自己責任」で生レバーを食べたがったとしても、店側はキッパリと断るしかないと言えそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

好川 久治
好川 久治(よしかわ ひさじ)弁護士 ヒューマンネットワーク中村総合法律事務所
1969年、奈良県生まれ。2000年に弁護士登録(東京弁護士会)。大手保険会社勤務を経て弁護士に。東京を拠点に活動。家事事件から倒産事件、交通事故、労働問題、企業法務まで幅広く業務をこなす。趣味はモータースポーツ、ギター。

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