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特養老人ホームの職員が床ずれ1か月半放置、食事介助ミスで女性死亡…遺族が提訴
遺族代理人の吉田伸広弁護士(左)と村上光明弁護士

特養老人ホームの職員が床ずれ1か月半放置、食事介助ミスで女性死亡…遺族が提訴

埼玉県ふじみ野市の特別養護老人ホームで、誤えん事故により亡くなった中野小夜子さん(当時86)の遺族が7月18日、同ホームを運営する社会福祉法人に対して慰謝料など約4055万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

遺族の代理人弁護士が同日、司法記者クラブで記者会見を開き、小夜子さんの長男仁さん(56)と次男覚さん(49)のコメントを発表。仁さんと覚さんは、「母の人生の最後がこのような結果になり、しっかり親孝行もせず旅立たせてしまったことに対して申し訳ない気持ちでいっぱいです。一連の事故が何故起きてしまったのか。母の人生を奪ったことに対して、施設は本当に責任と謝罪の気持ちを感じているのか。一連の事故の責任の所在はどこにあるのかを今後明らかにして、誠意ある謝罪と対応をしてほしい」と求めている。

●誤えん事故が原因で死亡、床ずれは1か月半放置

訴状などによると、亡くなった小夜子さんは2015年1月、社会福祉法人相愛福祉会が運営する特別養護老人ホーム「上野台の里」(埼玉県ふじみ野市)に入所した。誤えん(食べ物が誤って気管に入ってしまうこと)事故は、2015年9月7日の夕食時に発生。介護職員が短時間で大量の食べ物を口に詰め込んだ結果、小夜子さんは心肺停止状態となり、病院に緊急搬送されたものの、同年10月23日に誤えん性肺炎により亡くなった。

遺族の代理人弁護士によると、事故発生前には小夜子さんが床ずれしていることを知りながら放置。約1カ月半にわたって家族に報告しなかったことも発生していた。その結果、皮膚として再生不可能になる「壊死組織あり」の状態にまで悪化し、同年8月31日には今後のケアについて改善策を市役所に提出していた。

しかし、誤えん事故はその「最善の介護」を誓ったわずか1週間後に発生。小夜子さんは自力摂取できていた時でも、食事に少なくとも30分はかかっていたが、事故当日は長く見積もっても8分の間に主食5分の2、副食を全て食べ終わるというハイスピードで食事介助されていた。代理人の吉田伸広弁護士は「誤えん事故の前提として、床ずれを作って体の状態を悪くしたということも寄与していると考えている」と指摘する。

●「事故の謝罪や誠意が感じられない」

施設は事故について職員の過失を認め、保険会社を通じて今年2月に「損害賠償を請求しない」という内容を含めた和解金約1700万円を提示した。ただ、施設の職員がお通夜や告別式に一切参列や連絡さえしていないことなどから、遺族は「このまま風化させてしまうと、また同じように被害者が増えてしまうのではないか。これで母のことを片付けられてしまっていいのか」と悩み、提訴に至った。

次男の覚さんは自身も介護施設で働いている。裁判を提議せずに施設に対して様々な働きかけを行ったが伝わらず、提訴を決めたという。吉田弁護士は「(覚さんは)介護の現場がいかに大変かということも理解している。現場を変えたいという思いも持ってこの訴訟に臨んでいる」と話した。

(弁護士ドットコムニュース)

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