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なぜ彼女たちは「国会前」で声を上げるのか?「SEALDs」女子学生に聞く(前編)
SEALDsの主な活動の場である国会議場堂前に立つ女子学生たち

なぜ彼女たちは「国会前」で声を上げるのか?「SEALDs」女子学生に聞く(前編)

安倍政権が成立を目指す安保関連法案に反対して、国会前などで抗議活動を行う学生グループ「SEALDs」(シールズ)。今年5月3日、憲法記念日に結成された団体だが、ヒップホップのリズムに乗せて「コール」をかけながら、10代、20代の若者たちが自分の言葉でスピーチしていく新しいスタイルで、急速に注目を集めるようになった。その動きは全国各地の学生グループに飛び火しただけでなく、上の世代とも連携して、「安保法案反対」の大きなうねりを巻き起こしている。

最近はメディアに登場する機会も増えたSEALDsだが、前進の団体(SASPL)の創設メンバーである奥田愛基さんらが取材に応じることが多い。しかし、現在のSEALDsを支えているメンバーの中には、今年の5月以降に参加した学生も少なくない。そうした学生たちはなぜ、SEALDsに参加しようと思ったのか。また、急拡大したグループの内実はどうなっているのか。

今回は、SEALDsに入って3、4カ月という3人の女子学生(和葉さん、かりんさん、望さん)にインタビューして、SEALDsでの活動の様子や公の場で声を上げる意味について聞いた。(取材・構成:渡部真)

●デモ、デザイン、広報などの「班」に分かれて活動

──SEALDsのメンバーって、人数や男女比はどんな感じでしょうか?

かりん:いま(2015年9月5日)の時点で、関東のSEALDsが180人ほどです。年齢は18歳から28歳くらいまでで、大学1年から大学院生までの世代。大学に通ってなくても同世代で入っている人もいます。そのほか全国でSEALDsが立ち上がっています。男女比は正確にはわからないですが、だいたい半々くらいじゃないかな・・・。

──メンバー間では、どうやって情報を共有しているんですか?

和葉:基本的にはLINE(スマホ向けメッセージアプリ)ですね。そのLINEグループの登録者が、メンバー数ってことになるんです。

──180人のLINEグループでチャットするって、すごそうですね。SEALDsの組織って、どんな体制になっているんでしょう?

かりん:SEALDsは「組織」というよりは、「集団」といったほうが正確ですね。流動的ですが、8つくらい「班」があって、そこにメンバーが所属しています。デザイン、デモ、映像、コンテンツ、出版、サロン、広報戦略などがありますが、いつのまにか分裂していたりするので、よく分かりません。ほかにも、コールセンターなど、個々のプロジェクトチームやセクションがあります。班やプロジェクトごとに、LINEのグループを作っています。

──みなさんはどの班やプロジェクトを担当しているんですか?

かりん:私はデモ班や、できたばかりの選書プロジェクト班などです。いろいろ掛け持ちしています。

望:私は美大の学生ということもあって、出版班とデザイン班に入ってます。出版班は、大月書店から今度出る書籍『SEALDs 民主主義ってこれだ!』の制作。デザイン班は、フライヤー(ビラ)などのデザインを担当しています。私はグラフィックだけですが、ウェブサイトのデザインを担当する人もいます。

和葉:私は、広報戦略班やコールセンターのとりまとめをしています。広報戦略班は、TwitterやSNSのアカウント管理とかですね。コールセンターは、SEALDsのメンバーに入りたいという希望者や取材依頼に対応したり、メールやDMでいただくご意見やメッセージをチェックしています。全体のLINEグループとは別に、とりまとめの人たちを中心とした「副司令官LINEグループ」というのもあります。

かりん:私は大学の学園祭実行委員をしたことがあるのですが、SEALDsはそういう組織文化と全く違います。誰かに命令されたりとか、割り当てがあって義務でやるとか、そういうのはないですね。普通は「リーダーだからやる」という感じでしょうが、SEALDsの場合は、仕事をする人や時間を割ける人が、なんとなくリーダーっぽくなる。

和葉:現時点でアクティブな人がコアメンバーになっていく感じですね。長くやっているとどうしても疲れちゃうので、後から入った人たちが代わりに中心を担っていく。

●オンラインとオフラインを駆使して柔軟に動く

──LINEなどオンラインだけだと、不便はないですか?

和葉:実際にみんなで集まる「全体ミーティング」もあります。以前は月に1回のペースだったんですが、最近は月に2、3回、やってますね。集まるのは多くて60人くらい。全体ミーティングだけじゃなくて、勉強会とか、班ごとのミーティングもありますね。

かりん:メンバーになる前は、報道を見て、LINEだけでやり取りしている「ハイテクで今どきな若者たち」と思い込んでいました。しかし、LINEだけでつながっているわけではなかった。全体ミーティングに参加して、少しずつ顔見知りになって、友達になって・・・と、意外にアナログな部分が大事なんだなってわかりました。

──メディアでは、中心的な存在として奥田愛基さんが登場することが多いと思いますが、SEALDsにはハッキリとしたリーダーがいないと聞いています。

和葉:たしかに、彼はがんばっていると思う。でも、リーダーではないですね。

望:誰か一人に頼るというのではなくて、一人ひとりが自立してやっている。SEALDsのそういうところは良いなと思っています。

和葉:基本的には「言い出しっぺがやる」っていうのが前提。でも、「疲れたらやめていい」んです。

かりん:誰も強制しないのが、SEALDsの特徴かなと思います。SEALDs以外のことで忙しくなったら、無理してやらなくてもいいし、またSEALDsの活動ができるようになったら戻ってくればいい。

和葉:班やプロジェクトも、必ずどこかに入らなくちゃいけないというわけでもない。国会前に来るだけっていう人もいます。みんな、自分ができる範囲でがんばっている。メンバー同士で「大学の単位を落としちゃいけない」って、ふざけて言い合っています。

●たくさんの「悪意」に触れてしまう

──自分が担当することで、苦労みたいなものはありますか?

望:少し人数が増えてきてはいるものの、デザインができる人が少ないので、常に人手不足な感じがあります。

和葉:コールセンターでは、メールとTwitterとFacebookと、それぞれ対応をわけていますが、毎日、何十件も確認しないといけない。特に大きなイベントの後だと、一つのアカウントに100件以上のメールやDMが来る。その中には取材依頼の連絡もあるので、チェックしないわけにはいかないですね。

かりん:私はときどきメール対応をしているんですけど、一日に数十件もメールが来て、どんどん溜まっていっちゃうんです。見逃したり、返事が遅くなったりしてしまうこともあって、苦労しています。

──どんなメールが来るんですか?

かりん:取材などの依頼が主です。それから、いろいろな方々からSEALDsに対してご意見をいただきます。できるだけSEALDsへの意見は聞いてみたいし、率直な意見はありがたいです。ただ、「こんなこともしてください」とか、「国会前だけじゃなくて、○○大使館にも行かないんですか?」と言われると、「そう思ったあなたがやろうよ」と思うこともありますね。生身の人間なので、できることは限られてしまうのです。

和葉:SEALDsをやっていると、人の悪意に触れてしまう機会が多いです。もちろん、みなさんの善意に触れることも多いですけれど、「あなた、それを学生の集まりに向かって言って、恥ずかしくないの?」と思うこともありますね。

──そういう悪意を感じるメッセージというのは、個人にも来るんですか?

和葉:個人のSNSのアカウントでも、SEALDsのメンバーだってことを明らかにしていると、嫌がらせはありますね。私にも、エロい画像、グロい画像、ホラー画像とかが、一通り来ました。誹謗中傷みたいなメンションも来ますし。

かりん:卑怯な話ですが、女性メンバーに対しては、特に多いですね。

──そうした誹謗中傷や嫌がらせに対して、SEALDs内で何らかの対応方法を決めているんですか?

和葉:基本的には、スルーです。

かりん:でも、酷いものには、法的措置をとることもありますね。

※なぜ彼女たちは「国会前」で声を上げるのか?「SEALDs」女子学生に聞く(後編)に続く

http://www.bengo4.com/other/1146/1288/n_3681/

(弁護士ドットコムニュース)

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