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なぜ彼女たちは「国会前」で声を上げるのか?「SEALDs」女子学生に聞く(後編)
それぞれの思いで、SEALDsに参加した女子学生たち

なぜ彼女たちは「国会前」で声を上げるのか?「SEALDs」女子学生に聞く(後編)

いまの政治に対する、若者たちの新しい意見表明の形として注目を集める学生グループ「SEALDs」(シールズ)の活動。安保法案に反対する抗議行動の様子がメディアでもよく取り上げられるようになったが、参加している学生たちの思いはさまざまだ。SEALDsに入って3、4カ月という3人の女子学生(和葉さん、かりんさん、望さん)へのインタビュー。後編では、SEALDsに入ったきっかけや今後の活動について、彼女たちの肉声を紹介する。(取材・構成:渡部真)

●SEALDsに参加したきっかけは、3人それぞれ

──みなさんは、今年の5月以降にSEALDsに加わったということですが、なぜ参加してみようと思ったのでしょうか?

望:SASPL(2013年12月に発足したSEALDsの前身グループ)の時代から、デモや集会をやっているのは知っていましたが、雰囲気が合わないと思っていたので、入る気にはなりませんでした。ところが今年の5月14日、安保関連法案の閣議決定があって、その後の首相会見を見て、すごく腹が立った。「もうダメだ!自分も何かしなくちゃいけない!」って思ったんです。

そのときはデモに参加する気はなかったんですが、もしSEALDsがデモ以外にやっていることがあるなら参加してみようかなと思って、Twitterで「デモ以外に何やってるんですか?」って聞いてみたんです。少しやりとりをした後、「じゃあ、とりあえずLINE入りますか?」って言われたのが、きっかけですね。

かりん:私は、SASPL時代から抗議行動には参加していました。ただ、メディアで取り上げられていた人たちが、「ラップ調のコールをしていて、オシャレでカッコよくやってる人たちです!」みたいに紹介されているのを見て、「自分はついていけない」って思っていました。そう思いながらも、抗議行動の後ろのほうでぶらぶらしていた。

──国会前までは行っても、グループには入らなかったわけですね。それが変わったきっかけはなんですか?

かりん:今年の6月に「国会傍聴プロジェクト」という企画がありました。「国会を傍聴した後に、公園の芝生の上でお茶しませんか」という内容でした。それなら私でもついていけるかなと思って、参加しました。そこで実際にSEALDsの人たちと話してみたら、まったくイメージと違っていた。

言いたいことがあるから、活動している。言わなくちゃいけないことがあるから、そこに立っている。とても誠実で真面目。メディアでは「政治に興味なかった若者が目覚めました」「おしゃれデモ」みたいに報じられていたけど、そうではなかった。「この人たちと一緒にいたい」と思って、数日後、SEALDsのLINEグループに入りました。

和葉:私は、去年の7月ごろ、集団的自衛権の拡大解釈に反対する抗議行動が行われていたときに、「デモってどんな感じなんだろう」と思って、友だちと一緒に国会前に見に行ったんです。でも、そこではおじさんたちが「安倍を引きづり降ろせ!」とか「安倍を殺せ!」 とコールしていた。そういう言葉が許される空間って日常生活にはないので、すごく恐ろしい場所だなと怖くなって。泣きながら帰りました。

●自分の気持ちを代弁してくれるように感じられた

──デモ初体験で泣かされてしまったんですね。

和葉:たまたま、そういう人たちの前に行ってしまっただけなんですけどね。それでも 解釈改憲で集団的自衛権は合憲、となっていくのをニュースで見ていて、このままではダメだと思った。そのときに、SASPLの「絶対来いよ」と呼びかける動画を見て、「ここなら私の居場所があるかもしれない」と思った。少なくともこの人たちは「安倍を殺せ!」とは言わないだろうと感じて、SASPLがやってる抗議行動に通うようになったんです。

ただ、SEALDsとして再スタートした今年の5月になっても、メンバーにはなっていませんでした。でも、6月5日の国会前行動のとき、 (SEALDsの中心メンバーの)奥田くんに「もう入ってくださいよ、いい加減」と言われて・・・。雨のなかで頭を下げられたら、断れないでしょ(笑)

──望さんは、最初はデモに参加したくないと思っていたのに、結局は参加するようになったんですよね。それはなぜですか?

望:私は以前、デモが映っている映画で、みんなが同じことを言ってるのを見て、同じ思想の塊と感じたのが嫌だったんですね。だけど、SEALDsに入ってフライヤー(ビラ)を作ったので、自分が参加しないわけにはいかないでしょ、と。それに、デモを否定するとしても、1回は自分も参加してみないと否定できないな、とも思いました。

──デモに参加してみて、どう感じましたか?

望:実際に行ってみたら、コールを叫んでいるだけじゃなくて、スピーチしたり、ちゃんと自分の言葉で気持ちを表現している人たちがいました。スピーチのなかには、すごく共感できるものもあって、口にすることができなかった自分の気持ちを代弁してくれているように感じられて・・・。

●共通しているのは「自由と民主主義を大事にしたい」という気持ち

──SEALDsの正式名称は「Students Emergency Action for Liberal Democracys」というんですよね。日本語にすると「自由と民主主義のための学生緊急行動」。

かりん:国会前に来るときに、いつも思い出す日本国憲法の条文があるんです。憲法12条です。そこには、憲法が国民に保障する自由と権利は、「国民の不断の努力」によって、保持しなければならず、また「常に公共の福祉のために利用する責任を負う」と、書いてあります。

デモって「不断の努力」の一つですよね。自由や権利は、誰かが守ってくれるものではなく、ぼんやりしていたら、いつの間にか消えてしまうもの。SEALDsはあくまで「緊急行動」ですけど、これからも一人ひとりが自分自身で自由と民主主義を求めていって、それが脅かされたときには行動していく。それが、みんなの自由と権利を実現していくことにもつながると思うんです。

──SEALDsの抗議行動では、多くの若者たちが自分自身の言葉で、いまの政治に対するメッセージを発しているのが印象的です。

かりん:私はもともと、人と何かをするのが得意じゃないというか、一人でいるほうが好きなんですよね。でも、SEALDsは、私のように政治に興味を持っているけど、ちょっとひねくれた人にとって、受け皿になる存在じゃないかって感じられました。若い人は、社会や政治に関心を持っていないと言われてきましたが、実はそうではなかったんだと思います。何をどうやっていいかわからなかったけれど、SEALDsは「誰でもこういう形で言えるんだ」「こう言えばいいんだよ」って示してくれた。

──そんなSEALDsのメッセージとして、たとえば「安倍はやめろ!」っていうコールなどには、批判する声もあります。内部で反発する意見とかは、出てきませんか?

かりん:それは普通にありますよ。「呼び捨てにしないで、『安倍さん』とか『安倍首相』と呼ぼうよ」という人もいるし、「やめろっていう要求は、ちょっとどうなの?」という子もいます。でも、SEALDsは自分の言葉で発言する場です。言いたくない言葉は、自分の言葉で、違う表現にすればいい。お互いに聞きあっているうちに、また次の新しい自分の表現へと発展していくんですね。

和葉:SEALDsのなかでも、全員がいつも、同じようにコールに合わせているかというと、そうでもないですね。

かりん:私もそうですけど、自分が言いたいコールは言うけど、「これは嫌かな」と思うときはコールしないんですよね。

和葉:SEALDsの中には、安全保障について考えの違う人がいますし、憲法についても護憲派と改憲派がいる。「正しい答え」があるわけじゃないし、みんな考え方が違って、それぞれが自分の理由をもって行動しているんです。

かりん:みんなが共通して思っていることがあるとすれば、自由と民主主義を大事にしたい、それを脅かすものに対しては「おかしいでしょ」って言っていきたい、というすごくシンプルな思いです。

●「SEALDs」という形にこだわっているわけではない

──今後のSEALDsやみなさん自身の活動ですが、どのように展開していきたいと思っていますか?

望:私の周囲では、まだ一緒に国会前に来てくれるという人は、ごく少数です。「安保法案には反対だけど、デモに行くのはちょっと・・・」という人もいます。でも、いまは安保法案の強行採決に反対してデモをしているけれど、本当に大事なのはこの法案を止めるかどうかじゃなくて、民主主義を根付かせることだと、私は思っています。これからも政治をもっと身近にしていくために行動したいです。

かりん:SEALDsがこれからどうなるかはわからないですけど、世代をこえて、いろんな人とのつながりが広がってきた。政治と社会を考える文化が形成された。それはすごい財産であり、強さだと思います。民主主義を考えていくというのは、「ハイ!明日で終わりです」というのではなくて、ずっと続けていくこと。ラジオ体操みたいに、日常的に続けていく。そういうのが理想かな。私がおばあさんになっても、私自身は民主主義と自由を大事にしていたいし、そのときに必要な行動をしたいと思っています。

和葉:私は、SEALDsの活動が一息ついたら、少し休憩したいですね。さすがに疲れてきたので(笑)。私たちは、SEALDsというグループにこだわりがあるわけじゃないんです。ただ、今回みたいに民主主義や私たちの生活が脅かされることがあれば、それを防ぐための行動に、何らかの形でSEALDsの成功体験をいかせるようにしたい。動くのは、別にSEALDsじゃなくてもいいんですよ。参考にする選択肢の一つとして、SEALDsのような行動もある、普通の人たちにもできるんだよって。

かりん:そう。あいつらがやってるんだから、こっちでもできるだろうって。デモなんて、誰だってすぐにできるんですよ。私たちが、先人たちの耕した土に根を張り、肥やしみたいなものを何となく受け継いでいるように、この後の人たちの肥やしになればいいと思っています。

※なぜ彼女たちは「国会前」で声を上げるのか?「SEALDs」女子学生に聞く(前編)に戻る

http://www.bengo4.com/other/1146/1288/n_3680/

(弁護士ドットコムニュース)

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