粗大ゴミ置き場で、魅力的な「ゴミ」を見かけることがある。ゴミとして遺棄されたのだから、自分で持ち帰って有効活用しても、なんの問題もないはず――。
そう考えて、ある女性がゴミ置き場の「自転車」を持ち帰り、修理して乗っていたら、巡回中の警察官に呼び止められ、自転車には盗難届けが出されていると指摘されたのだという。
その女性の夫が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーで「妻は在宅起訴されるのでしょうか。また、起訴されたら前科がついてしまうのでしょうか」と質問した。女性の行為はなんらかの犯罪になってしまうのだろうか。足立敬太弁護士に話を聞いた。
●「遺失物等横領罪」とは?
「問責される可能性がある罪名は、『遺失物等横領罪』(刑法254条)です。『遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者』に該当し、法定刑は1年以下の懲役、または10万円以下の罰金もしくは科料(1万円未満の財産刑)です。
遺失物横領罪の典型的なケースが自転車です。TVドラマ『北の国から』でも、自転車を欲しがっていた小学生の純(吉岡秀隆)のために、放置自転車を持ち帰った黒板五郎(田中邦衛)が、警察官から職務質問を受けたシーンがありました。
本物の『自転車盗』が窃盗後に職務質問を受けたとき、窃盗がばれるのを避けるために『拾った』と言い訳するケースもあります。『放置されていたから』と弁明しても、警察が大目に見てくれることは少なく、それなりの取調べはあると覚悟したほうが良いでしょう」
●「ゴミにも価値がある」時代
では、ゴミ捨て場から何かを持ち去ることは、犯罪になってしまうのか?
「古くは『所有権を放棄したゴミの持ち去りは犯罪ではない』と考えられていました。しかし、リユースやリサイクルの進展に伴い、ゴミにも価値があると社会的にみなされるようになってきています。こうした社会構造の変化に伴い、法律の態度も変わりつつあります。
自治体や町内会が管理する『ゴミ置き場・集積場』からの持ち去りは、管理者の占有を侵害しているという構成(法律上の理論)も考えられていますし、条例で禁止する自治体もみられます。
ゴミはルールに従って処理するという時代です。持ち去りなどルールから外れた行為には、ペナルティがありうることを覚悟したほうが良いと思います」
ゴミとして処分されるくらいなら、私が活用したほうがエコなはず――。そんな言い訳も聞こえてきそうだが、法律はそれを許していないようだ。