動画サイト「FC2」創業者の実弟・高橋人文氏と、同氏が相談役をつとめる株式会社「ホームページシステム」(大阪市北区)の足立真社長が4月23日、「公然わいせつ罪」の容疑で、京都府警サイバー犯罪対策課などに逮捕された。
報道によると、高橋相談役と足立社長は、「帽子君」と名乗っていたFC2利用者の男性=執行猶予付きの有罪判決が確定=らと共謀し、男女の性行為を映した無修正わいせつ動画を、不特定多数にライブ配信した疑いが持たれている。
警察は「ホームページシステム」が実質的にFC2を運営していたとみている。高橋相談役と足立社長の2人は、容疑を否認しているという。
今回の事例では、サイトの運営者と動画の配信者が「共謀した」として逮捕されたようだが、一般的に、動画配信サイトの管理者と、そのサイトを利用して生中継をする人が、「共謀」していると言えるものなのだろうか。わいせつ問題にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。
●「共謀共同正犯」と言えるのか?
「各社の報道を見る限りでは、今回逮捕された2人には、国内でわいせつ行為を生中継した者との『共謀共同正犯』の容疑がかけられているようです。
ただ、一般的には、違法動画の配信者とサイト管理者の間に共謀共同正犯が成立するかは、極めて微妙な問題です」
両者が共謀共同正犯になるかどうかのポイントは、どのような点なのだろうか?
「そこは事実関係によりますが、ポイントは『意思の連絡があったかどうか』です。
参考になる裁判例を2つ挙げておきます。
ひとつめは、平成18年4月21日の東京地裁判決です」
これは、ネット掲示板に『アイコラ画像』が投稿された事件の判決で、掲示板を管理していた人と画像を投稿した人とが、名誉毀損の「共謀共同正犯」だと認められたという。
「この判決はまず、『本件画像を投稿した者において、本件掲示板を開設・管理する者が画像の投稿を呼びかけていることを認識しつつ、これに呼応して本件各犯行を敢行した』と認定しました。
そのうえで、『そこに共同正犯成立の前提となる意思の連絡ないし相互利用補充関係を肯定することも可能である』と判断して、掲示板の管理者と画像投稿者が『共謀共同正犯』の関係にあると認めました」
こちらのケースでは、掲示板の管理者がアイコラ画像の投稿を呼びかけていて、投稿者がそれに応じる形で画像をアップしていたことが、「意思の連絡」とみなされたようだ。
●「意志の連絡」がなければ「共同正犯」は成立しない
「もうひとつは、平成18年1月16日の名古屋地裁判決です」
こちらはネット掲示板に『児童ポルノ画像』が投稿されたというケースのようだが・・・。
「この判決では、『(※ネット掲示板に)投稿者らが児童ポルノを送信して記憶蔵置させ、これがインターネットを通じて不特定の第三者に閲覧可能であることを(※掲示板の管理者と投稿者が)相互に認識していた』としつつも、『児童ポルノを不特定の第三者に閲覧させることについての意思の連絡があったとは言い難い』と判断しました」
後者の判決では、掲示板の管理者は、『共謀共同正犯』ではなく、犯行を手助けした『ほう助犯』と判断されたようだ。
このようにサイト管理者と、利用者(投稿者)との間に共謀があったかどうかは、個別具体的な事情をみていかないとわからない、ということになりそうだ。奥村弁護士が「極めて微妙な問題」というのは、こういった点なのだろう。
FC2の事件が裁判になった場合、高橋相談役や足立社長と、わいせつ動画の配信者の間に「意思の連絡」があったといえるのかどうかが、大きなポイントになりそうだ。