田久保眞紀前伊東市長に対し、静岡県伊東市の市民有志2人が5月7日、市議選と市長選の費用計約8224万円を賠償させるよう求める住民監査請求を行ったと報じられました。
田久保前市長は、東洋大学の卒業をめぐる学歴詐称とされる問題をきっかけに、市議会から不信任決議を受けて議会を解散。その後再び不信任を受けて失職し、昨年12月の市長選では落選しています。
報道(テレビ静岡、5月7日など)によると、市民有志らはこの解散による市議会議員選挙(2025年10月)、市長選挙(同年12月)にかかった費用について、田久保氏が経歴の虚偽記載を行わなければ、不信任決議から選挙までの異常な経過は発生しなかったとして、市から田久保氏に請求するように監査委員が勧告することを求める住民監査請求を行ったとのことです。
「住民監査請求」とは何でしょうか?この制度の仕組みと今後の流れを解説します。
●住民監査請求とは何か
住民監査請求とは、市が税金をおかしな使い方をしていないか、住民が「きちんと調べて是正してください」と求めるしくみです。
住民であれば1人でも請求できます。選挙権がなくても構わず、外国人住民や未成年でも使えます。
●手続きのおおまかな流れ
住民から監査請求がされた場合、市に設置された「監査委員」という独立した機関が、原則60日以内に調査します。
調査の結論は、主に3パターンです。
- 監査請求の要件を備えていないとして「却下」される
- 調べたが問題なしとして「棄却」される
- 問題があると判断されて「勧告」が出る
「勧告」とは、具体的には、監査委員が今の市長に「田久保被告に損害賠償を請求してください」などと勧告するものです。監査委員が田久保被告に直接「市にお金を払え」と命令する権限はありません。実際に動くかどうかは、勧告を受けた市長次第です。
監査の結果に不満がある場合や、監査結果や勧告が60日以内に出ない場合、住民は30日以内に裁判所へ「住民訴訟」を提起できます。
住民訴訟についても、仮に請求が認められたとしても、裁判所が命じるのは、たとえば「被告(市長)は、田久保氏に対し、○○円を請求せよ」などの内容です。実際の請求は市から田久保氏に対して行われることになります。
住民監査請求と住民訴訟は「2段ロケット」のようになっており、裁判所に訴えるためには、まず監査請求を経なければなりません。
●今回の請求が認められる可能性は
私見ですが、今回の請求が認められるハードルはかなり高いと考えています。
議会の不信任決議も、田久保被告による議会解散も、その後の選挙の実施も、選挙費用の支出も、いずれも法律上認められた手続きです。「市の支出行為そのものが違法だった」とは言いにくく、選挙に至った経緯も含めて違法を主張するものと思われますが、ハードルは高いといえるでしょう。
今後、監査委員が60日以内にどんな判断を下すか、そして市民側が住民訴訟に踏み切るかどうかが注目されます。
小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)